TV報道は大真面目にズレていて面白い

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10月26日(土)の「マネーの羅針盤」の特集は物流。早速、録画して観た。しかし「Amazonや楽天といったネット通販が、自前の物流センターを持ち始める中、物流業界はどう立ち向かうのか?」という番組説明からは、例によって何か番組報道側が勘違いしている臭いがプンプンした(そもそもAmazonは前から、そして世界中で自前の物流センターを持っているのをどんどん大型化・高機能化している)。

途中で取材側から「ネット通販が自前の物流センターを持つということは、物流会社の機能を奪い返そうとしているか、少なくともけん制になるので価格交渉が厳しくなっているのでは?」といった類の質問があったのだろう。自社の戦略や計画を自信ありげに語っていたヤマト運輸の木川社長は、塩田アナウンサーに対し「我々は弱っていませんよ」と何度もコメントしていたという。

当然である。ヤマトは競合他社に常に一歩先んじて投資することで、B2Cの市場での圧倒的優位性を固めようとしており、Amazonや楽天といったネット通販側も自分たちの物流センターを大型化するなどの工夫をすることで、宅配に渡す前に自分たちができる効率向上をしようとしているのである。その上で、より効率的で品質の高いサービスを提供できる相手をパートナーにするべく物流企業を選び直している。

その結果、宅配便事業はどんどんヤマトへの集中が進んでいるのが実情である。既に日通・日本郵便の連合は宅配便市場からは脱落しつつあり、2強のもう一方・佐川急便はB2Bへの集中特化を進めている。つまりB2Cの宅配便市場はヤマトが制覇しつつあるのだ。

番組の中で、流通経済大学の矢野教授がヤマトの狙いを「ロジ一括受注による顧客企業の囲い込み」だと喝破した。単純な配送の低コストとスピードだけの競争じゃないよ、在庫管理など丸受けすることでロジ全体のコスト低減に貢献しているんだよ、と説明していた。しかしそれに対し、蟹瀬キャスターは「企業にとっては在庫を抱えるのはコストアップ。それをヤマト側が持ってくれることになればメリットになる」と、とんちんかんなコメントをしていた。矢野教授も蟹瀬キャスターが何を言わんとしているのか分からなかったのだろう、「そうですね」といっていた。でもヤマトは顧客企業から在庫を買うわけではないので「在庫を持ってくれる」というのは間違いですよ~。

さて、ヤマトの羽田クロドゲートについて24時間365日稼働には驚かないが、総工費1400億円、東京ドーム4個分の広さというのはさすがに凄い。よくそんな場所が確保できたものだと感心する。中も最新機器によるオートメーションが充実しており(映像では確かに速かった。しかし噂の「自動梱包ロボット」は映されなかった)、何と1時間に48,000個の荷物を処理できるという。ここまでくると桁が違うので、実感が沸かない。これによりネット通販(小生のクライアントを含む)などの当日配送のニーズ、そしてアジア諸国への翌日配送(!)のニーズに対応できるという。恐るべし、ヤマトの実力。

蟹瀬キャスターは最初からこれを言いたくて用意していたのだろう。「流通は『最後の暗黒大陸』だと経営の神様、ピーター・ドラッカーが言っています。その暗黒大陸の部分に今、光が差しかかってここに未来の可能性が相当あると言って間違いないと思います」と高らかに宣言していた。うーむ、この人、物流と流通の違いを認識しているだろうか。ドラッカーが言ったのは「物流」のほうで、「流通」といったら卸→小売といった商流を普通は指すけど…。

この知ったかぶりの蟹瀬キャスターに対し、テレビ東京の塩田真弓アナウンサーは自然体である。実際に羽田にあるヤマトの新物流センターを訪問し、幾つか感想をホームページに載せていて、なかなか興味深い。 1つ目は、雰囲気。一般的に無機質なはずの物流センターが美術館のように洒落たデザインで、おしゃれなカフェや保育園、体育館を併設しているとの女性らしい指摘。2つ目は、センターの構造の複雑さ。建物はとっても大きいのに、中は「広〜い!大きい〜!」という感じがしないという。「企業秘密を保持するために複雑にしたのかも?」というのは、うがち過ぎ。きっと顧客企業毎にエリアを区切っているので狭く感じるのだろう。

3つ目は意外に人の手に頼っていること。高速ベルトコンベアが行き交うところは別だが、企業の商品を預かっている在庫管理スペースは、人手でピッキングして箱詰めしていると指摘。矢野教授によると、震災でオートメーションシステムが完全に停止してしまった経験から人手回帰の流れになっているということだが、単に自動化がペイしない、まだそこまでは自動化は難しい(送付対象の商品形状が多岐にわたるため、しかも顧客企業の製品設計がどんどん変わる中、汎用対応できる自動ピッキングのロボットはまだ実用化されていないゆえ)というだけと思うが…。というのも、停電になってしまえば、宛先別に分けるベルトコンベアが止まるゆえ、ピッキングだけ手動で動いても仕方ない。この先人手不足がどんどん顕在化するのに、片方だけ自動化し片方はわざと手動のままにする積極的な理由はないと思うが…。