コンパクトシティ化は住民自らが考えるしかない

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10月21日(月)のクローズアップ現代は「わが町を身の丈に ~人口減少時代の都市再編~」と題し、コンパクトシティ事業の現状を伝えてくれた。

急速な高齢化が進むニッポンの地方都市は、空き家の増加や税収減少下で、施設維持コストなどに苦しんでいる。こうした事態に対して国は9年前から、郊外に広がった施設や住宅を中心部に集約する「コンパクトシティ」事業を推進してきた。

2012年9月には「エコまち法」を制定し、初めて都市機能の集約を明記。2014年には減税や補助金を厚くする予定だ。例えば、郊外から中心部へ病院や商業施設を移転させた場合、郊外の土地売却益の減税を検討。中心部に介護施設や学校などを建設する際には最大8割(!)を補助する制度も導入する方針だという。拡大し過ぎた都市の機能を、住民の「身の丈」に合わせて中心部に集約しようという狙いである。

しかし行政やディベロッパー主導による試みは殆ど頓挫してきた。「町の集約化」で先行する自治体を見ると、思うように進んでいないのが実情だ。例えば全国に先駆けてコンパクトシティを進めてきた青森市では、およそ10年前から中心部に商業施設や高層マンションを建設し、郊外から人を呼び込もうとしてきた。ところが、市が出資した中核施設は店舗が次々と閉鎖。思ったほど客が集まらなかったからだ。マンション以外では空き家が目立ち、郊外からの移住はほとんど進んでいない。

市の構想では、高齢者に住宅を売却してもらい、その資金でマンションを購入してもらおうと考えていたが、まず住宅の売却ができないのだ。「将来放棄される」地区の物件に買い手が付くはずがなく、元手ができない。しかも住民たちは、自分たちの希望を伝える機会もほとんどないまま町の再編が進んでいることに、不満を抱いているという。なんとちぐはぐな計画か。きっと東京の大手の○○総研あたりが机上で作った計画で動いたのだろう。

それに対し、埼玉県鶴ヶ島市などが、住民自身によるエリア内の設備のスクラップ&ビルドに取り組み始め、注目を集めているという。行政から示された施設整備の予算枠を元に、例えば地域拠点施設の中身そのものを検討したり、新規建設を縮小したり、あるいは空き住居を地域拠点施設に転用したりといった住民自身による町の「仕立て直し」が成果をあげているのだ。住民こそ必要・不必要を決める主体であるべきという実証ではないか。