欧州一の親日国・ハンガリーは不思議な魅力にあふれている

グローバル

6月29日に放送された未来世紀ジパングは「知られざる親日国シリーズ・ハンガリー」。かつてハプスブルグ家が統治したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地が同国の首都、ブダペストです。ドナウ川の両岸に広がる歴史ある街並みは、その美しさから「ドナウの真珠」と称えられています。

番組のはじめに教えられたのが、ハンガリーと日本の間の意外な共通点。ひとつはお辞儀の習慣。また、名字と名前の順番が日本と同じ(ヨーロッパではハンガリーだけ)。しかも祭りのときには流鏑馬が披露されます。これはハンガリーと日本が同じ中央アジアに民族のルーツを持つからだとのことです。これは全く知らないことでした。

他にも、温泉好き。ブダペストにはまるで宮殿のような豪華な建物の中に巨大な露天風呂があり、一度に2000人以上も入浴できます。さらに、さらに300校以上の小学校で“そろばん”が使われています(中国製の品質の悪い算盤を使っていたので日本の算盤メーカーが販売攻勢をしかけていました)。25年前の東欧自由化の際に日本が算盤を紹介したところ、もともと数学教育が盛んだったハンガリーであっという間に広がったそうです。

そういえばハンガリーは天才国家として知られており、人口当たりのノーベル賞受賞者が世界最高だそうです。ハンガリー発の発明品としては、マッチ、ボールペン、炭酸水、コンピュータです(現在使われているコンピュータの99.9%はノイマン型)。ルービックキューブもハンガリー人のキュービック氏の発明ですね。

“ベルリンの壁”崩壊のきっかけは、ハンガリーにあったという話にも驚きました。オーストリアとの国境にある街ショプロンで、“ベルリンの壁”崩壊の3か月前に、極秘で西側への脱出劇が仕組まれていたのです。計画の名は「ヨーロッパ・ピクニック」(その計画が練られた家の音楽家の日本人妻が当時のエピソードを語っていました)。その計画が成功し、ハンガリーの国境は結局撤廃され、それを見てベルリンでも“壁”崩壊に至ったのです。小生は当時米国にいたので、大半の日本人と少し違うニュースエピソードに触れていましたが、これは知りませんでした。

1991年、自由化直後の(つまり特に産業のなかった)ハンガリーにいち早く進出した日本企業が、自動車メーカーのスズキです。自由に車を買えなかったハンガリーの人たちにとって、高品質で割安なスズキは圧倒的なシェアを誇る国民車となったのです。「夢の車だった。ハンガリー人の夢の車なんだ」と番組が取材した人は言っていました。

しかもスズキは自由化直後の1992年には生産拠点として工場を設立しました。最初は小規模から始め徐々に拡大、25年を経てエステルゴムにあるスズキの工場は一時ハンガリーのGDPの5%を担ったほどの巨大な工場となっていました。ここでハンガリーに一から自動車づくりを教えたのですね。

番組では同国が欧州一の親日国である理由は特に語られていませんでしたが(多分、昔ロシアに戦争で勝ったことが大きいとは思いますが)、こうしたことも重要な要素かと感じます。今のハンガリーは経済的には少し調子が悪いようですが、ギリシアと違ってEU加盟国ながらユーロを使っていないので、通貨安により欧州からの観光客や輸出で盛り返すことも可能なはずです。頑張って欲しいです。