ジョブズvs.ゲイツが体現したPC勃興期の波瀾万丈

ビジネスモデル

BS世界のドキュメンタリーが、「名作」を8月19日(水)に再放送してくれた。「スティーブ・ジョブズ vs. ビル・ゲイツ」。何度か放映されていながら録画する機会を逃していたが、今回は気づいて録画できた。そして観て楽しめた。

同じ1955年に生まれ、時に対立しながらもパソコンの黎明期から飛躍的普及を牽引した立役者の2人の歩みをドラマチックに追ってくれた。実に魅力的な時代に巡り合った、人間臭いライバルの葛藤だ。

スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツは得意分野も性格も対照的だ。ハードのジョブズ、ソフトのゲイツ。ヒッピー対オタク(英語ではNerdだった)である。

AppleⅡで先行して成功、大金持ちかつPC業界の大物になったジョブズは、自らが催したイベントでゲイツらMSの幹部を下っ端扱いし、彼らの反発を買う。Mac用にOSを提供したりエクセルを納入したり協業関係にあったMSは1985年、Windowsを発表し、それをジョブズが模倣だと批判して以来、誰もが知るほど確執が続いた。

その後は片方が調子よくなると、もう片方が不調になるというシーソーゲームが続く。MSがWintelとして業界を席巻した頃、ジョブズは自ら招いたジョン・スカリーと、自分が育てたはずの部下たちによってアップル社を追われた、云々。しかしジョブズの復帰に伴い、2人は提携関係を復活(この辺りは昨日のことのように思い出せる)。

復活した(そして少しだけ人間的にまともになった)ジョブズに率いられたアップル社はiMacを始めとする革新的な商品を発表していき、破竹の進撃を開始するのである。その後の歩みは、経営の天才の名を欲しいままにする、ジョブズの神話化が進んでいく。

その歩調に合わせるように、既に超富豪になっていたゲイツは少しずつMSの経営に興味を失い、妻・ミランダと共に慈善事業家として第二の人生を歩むようになる。

土俵を違えた、そして大人になった二人にはもう一時の感情や確執に拘る必要もなく、あるカンファレンスの公開舞台でウィットに富んだ会話を楽しむ余裕さえあったことが分かる。感慨深いというのはこういった光景である。その数年後、癌に犯されていたジョブズは先にこの世を去った。