テンポスバスターズ創業者は苦労人で人事の達人

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8月20日 (木)に放送されたカンブリア宮殿に登場したのはテンポスバスターズ創業者の森下篤史(もりした あつし)氏。題して「会社は社員が活躍する舞台!“社員が変わる”驚きの企業再生術!」、実に面白い回だった。

飲食店向けの厨房機器のリサイクルを手掛ける「テンポスバスターズ」。飲食店の開業を志す人たちにとって欠かせない店として有名である。中古も新品も、開業に必要なものなら何でも揃う店で、その価格は驚きの安さ。テンポスを利用すれば、通常400~500万円かかると言われる開業費用が、およそ半額で済むという。しかも、単に厨房機器を買うだけでなく、開業の支援サービスまで受けられる。業績も右肩上がりに推移してきた。

創業者・森下篤史は大学卒業後、電気機器メーカーに入社。普通のサラリーマン人生を歩んでいた彼は、36歳の時に一念発起し食器洗浄機の販売会社を設立する。しかし順調だった売上はすぐに頭打ち。そこで森下は事業の幅を広げようと、回転寿司や英会話学校などの事業に手を出したが、その全てが相次ぎ失敗に終わったという。

失意の最中、何気なく見ていたテレビ番組がリサイクル会社の特集だった。それを観て、「こんなに儲かるのなら」と、食器洗浄機で見知っていた厨房機器のリサイクル事業を始めたのだ。これが当たった。どんどん事業が拡大し、店も増やし、一挙にダントツの業界トップまで上り詰めたのだ。

なぜそんなに一挙にトップになれたのかという村上氏の質問に対する森下氏の答えがふるっていた。「秘密なんかは何もない。業界の先輩たちはちょっと儲かるとすぐに自分の私生活の贅沢のために使った。私は事業拡大のために店舗を増やした。その違いだけだ」と。呆れ返るような話だが、実際にそうなのだろう。中小の私企業意識のままの同業経営者と、上を見ていた森下氏との違いだ。

テンポスにはユニークな人事制度が目白押しだ。テンポスの社内には高齢の社員があちらこちらにフルタイムで活躍している。実は、テンポスには定年が無く、60歳以上の社員が全体の1/3を占めている(これはこれで凄い)。社員が上司を通さずに、自分の行きたい部署・店舗の管理者に電話しOKが出れば、異動できる「フリーエージェント制度」や、欲しい他部署の社員をスカウトできる「ドラフト制」など。まるでプロ野球のような仕組みだ。

こんなユニークな人事制度を導入した森下氏には「自分の人生は自分で決めるもの」という信念がある。さらに驚くべき人事制度が4年に1度行われる「社長のイス争奪戦」。テンポスでは“社長”を選挙で決める仕組みまで導入しているのだ。…凄すぎる。

森下氏が今、一番注力しているのが飲食店プロデュース業務。名古屋を拠点に拡大してきた「ステーキのあさくまだ」が目下の対象。一時、180億円の売り上げを誇ったレストランチェーンだが、無理な出店と激しい競争の中で縮小の一途を辿り、年商は1/6近くにまで落ち込んでいた。

森下氏は、テンポスで培った飲食店経営のノウハウと、社員のやる気を引き出す人事制度を導入し、「あさくま」の再建に乗り出している。「ヤマンバ軍団」という女性マネジャーたちに大幅に権限を委譲し、リストラでも残った店を鍛え直させている様子が紹介されていた。森下氏と彼女たちの強い信頼関係が感じられ、この再生も期待できそうだ。