中国の製造業・アパレルの街は混沌のさなか

グローバル

今、中国のモノ作りに激変が起きているということは世界の多くのビジネスマンが感じている。安い労働力を武器にした従来の労働集約型産業が限界を迎えているのだ。

8月2日に放送されたNHKのドキュメンタリーWAVEは「激変する中国の製造業・アパレルの街で何が起きているのか」というタイムリーな番組だった。

この中国での異変が顕著なのが繊維・アパレル産業だ。事実、売上高20兆円、関連企業が1万社を超える、繊維・アパレル産業の本拠・青島(山東省)では、工場がカンボジアなどアジアの国々へ次々と移転し始めている。揺らぐ「世界の工場」の様子を現在進行形で伝えてくれた。

山東省の繊維アパレルの貿易額は前年比5.4%減。人件費・原材料価格の上昇、人民元高という逆風の中、経営者たちが生き残りをかけて「海外脱出」を選択。さらに、工場用地の賃貸や誘致の紹介業など非「製造業」に向かう経営者すら現れた。

しかしそれは地元産業の空洞化を一気に進めることを意味する。ちょうど日本が「失われた20年」の間に苦悩しながら経験したように。

今年の3月、全人代で李克強首相は「目標とする経済成長は7%、中国製造2025を実施し、製造大国から製造強国へ転換させる」と述べた。政府の産業構造改革プラン、「中国製造2025」では「我が国の製造業は先進国より劣る。大きいが強くない、質の向上と発展が急務」としている。正しい自己分析である。

デジタル工作機械、ロボット、省エネ、新エネルギー自動車、バイオ医薬品を育成する産業に指定し、労働集約型のものづくりを知識集約型のものづくりへと国ぐるみで脱却を目指しているのだ。

そんな背景で、7月初めに上海の株式市場で株価が暴落、上場していた企業の約半分の株が売買停止した。日本市場にも、そして世界の株式・債権市場に多大な「中国ショック」をもたらしたことは記憶に新しい。

カジュアルウェア製造「桜花」では日本のクライアントから持ち込まれた注文の検討に取り組んでいた。それと同時に、国内での販売を始めようとオープン前のデパートに子ども服のショールームを作った。桜花・王旭東社長は(日本への輸出だけでなく)国内販売にも乗り出そうとしているのだ。自己ブランドも作ることになるだろう。茨の道だが、正しい選択になる可能性も結構ある。

6月、中国有数の輸出基地の青島港は中国経済の更に厳しい局面を示していた。山東省政府が発表した統計によると4か月連続で前年比対日輸出が減少。

そんな状況を背景に政府が発表した、青島を大改造してハイテクやバイオを中心とした新たな先端産業の集積地を作ろうとする「ブルーシリコンバレー計画」。青島の工業地帯に衝撃が走った。

シリコンバレー計画の用地に含まれた寝具カーテン製造「保利」は政府のプロジェクトからも追いつめられている。工場を全て閉じるまであと半年。キ鋼威社長に残された仕事は従業員を選択すること。今後、国内に残すのは試作品を作る為のわずかな職人。苦楽を共にしてきた従業員の首を切る苦しみ、これも日本の多くの製造業が経験した「痛み」だ。

そして彼らが新天地として追い求めるカンボジアなど、アジアのより貧しい途上国での生産立ち上げの苦労が色々と紹介されていた。日本からはクライアント企業のデザイナーが厳しい品質要求を突き付ける。今の(カンボジアの)職人レベルでは特売品しかできないと断言され、新工場での収支計画が崩れる予感がひた寄せる…。

しかも急激な賃上げの波が今押し寄せようとしており、今後もさらなる賃上げが予想される。アパレルなど軽工業には、世界中どこにも安住の地はないのだと思い知らされる。