甘利氏辞任の報に感じたこと

社会制度、インフラ、社会ライフ

甘利経済再生相の辞任には驚いた。もしかすると安倍内閣に迷惑をかけるのは不本意と辞めることになるかもな、と家族とは話していたが、これほど早く辞任するとは。素早い行動で内閣を守ろうとしたのだろう。何とも潔いというか、感心すらしてしまった。

ただ日本経済の再生の観点からいえば大いに残念な結末である。よりにもよって交代したのが石原元幹事長とは。大臣経験があるとか政策通だとかいう声があるが、あまりに格落ちであると同時に、かなりのリスク要因である。

甘利氏はTPP交渉で見せたように、非常に粘り強く調整するタフネゴシエータであり、信念の人である。しかし石原氏は失言も多い以上に、政治家としての力量に問題がある。道路公団民営化の過程で見せたように、相手を説得するだけの執念に欠け、信念に欠ける妙な妥協をする人である。この先、TPP合意や経済再生のために国内調整を進め、TPP実施のために細かい海外交渉を進める際に、とんでもない腰砕けをしかねない。日本経済のためには最大級のリスク要因が増えてしまったようだ。

それにしても今回の騒動には腑に落ちないことが幾つもある。マスコミはあまり深く追及せずに「甘利さんが辞めることになるかも」「野党の追及はどうなるのか」という点だけに絞っていたが、むしろ事の真相を明らかにして欲しい。自民党の誰かが言っていたように甘利氏は「罠にはめられた」可能性が高いのではないか。

そもそも自らわいろを渡そうとする人物(建設会社の「総務部長」)がマスコミ(週刊文春)と組んで政治家を告発するというのはどう考えてもおかしい。現金を手渡す時も用意周到に記者が録音や撮影をするなんて、初めから「罠に嵌めよう」と考えていたとしか思えない。しかもその人物は本当は建設会社の社員でもなんでもなく、右翼の筋もので札付きの「トラブル男」として有名な人物だという。

一体どういう意図と筋書きがあったのだろう。「誰が一番得をするのか」から考えると、週刊文春が一番怪しく、彼らが筋書きを練った可能性はかなり高い。仮にそうだとすると、もうまともなマスコミではなく、3流の恐喝週刊誌がやることだ。しかし本来の週刊文春の体質からするとあまりに悪辣過ぎて、にわかには信じがたい。

次に得をするはずだったのは野党・民主党だが、彼らにこんな手の込んだ芝居ができる頭脳と度胸があるとは思えない。一歩間違えば政党として崩壊しかねない(既にその一歩手前ではあるが)、際どい手口だ。

では甘利氏と同じ選挙区の政治家(誰か知らないほど無名か?)あたりが足を引っ張ろうとしたのだろうか。しかし神奈川13区で甘利氏は既に絶対的存在だ。今回のことで選挙民は却って甘利氏の大物ぶりを再確認することになったので、次の選挙でも安泰だろう。むしろこんな汚い手口への関与が疑われたら、その政治家は一生当選の可能性はなくなる。それもリスキー過ぎるだろう。

敢えて深読みをしてみると、ポスト安倍を甘利氏と争う人物が「今のうちに」と甘利氏排除に動いたという可能性はどうだろう。それには菅官房長官が最も有力候補だ。彼ならそうした策略を練るだけの知力があり、仕掛けを指示するだけの胆力もある。しかし彼は悪役を演じることができるが、私利私欲はない。そこは甘利さんと同じだ。

それに第一、あまりにリスキーで筋が悪い。このまま安倍内閣で点数を稼げば次期首相候補最右翼のまま禅譲の可能性が高いのに、こんな馬鹿げた(安倍氏にバレたら徹底的に排除される)リスクを冒すような馬鹿じゃない。麻生さんだって既に首相をやっているので変な欲はない。つまりこれもあり得ない。

一体、誰が何のためにこの右翼崩れの「総務部長」に罠嵌め行為をさせたのか、ライバル週刊誌やTV局は是非、真相追求をしてもらいたいものだ。