業界の常識に縛られなければ突破口はある

ビジネスモデル

このところ来年頭から始まる仕事の準備のためにバタバタしており、録画しておいたTV番組を観る時間をなかなか取れずにいる。その貴重な時間の中で食指が動いて観たのが、自分でもメリットがありそうな話。TTV東京のガイアの夜明け、12月15日放送の「〝うまくて安い〟を極める!」だった。

飲食業界は相変わらずの仁義なき戦い、何でも「新規オープンした店の1/3(正しくは1/2?)が一年以内に店を締める」という激しさだそうだ。そんな中、〝うまくて安い〟を極める外食の新潮流を見せてくれたのが今回の放送だ。

採り上げられていたのは2件、シーフード系とピッツア系だ。特に前者が印象に残った。

東京・有楽町のオフィスビルの地下にある、連日サラリーマンで賑わう居酒屋「魚治」。1月にオープンしたこの店のウリは、安くてうまい海鮮料理。高級魚のヒラマサやマグロなどの刺身7点盛りは1426円。1杯8千円はするという毛ガニが2759円。通常の3割安という格安での提供だ。ちょっと信じられない安さで、是非行ってみたいものだ。

安さの秘密は仕入れにある。築地市場大手の仲卸とかなり親密になった人が、その日に買い手が付かなかった魚を仕入れているからなのだ。それは食品メーカーのコンサルタントをしてきたエードットの社長、伊達晃洋さん。

足が折れたカニ、片方に寄ってしまったウニ、大きさが揃わない高級魚、新鮮なのに買い手が付かない、魚のアウトレットだ。「もったいないプロジェクト」と銘打って、魚治の他にも「立天まる」など3店舗を展開している。

伊達さんの故郷は漁師町の島根・島根町。市場に出せない魚が食卓に並んでいたが、幼心に「本当においしいのに、何で市場に出ないのか」と疑問に感じていたそうだ。今はその港で揚がる「もったいない」魚を仕入れて売りさばいているのだ。でもそれだけではない。

「立天まる」を経営するかばはうす社長、松田幸紀さんから相談されたのだ。「天ぷらなので油っこいものばかりで客が飽きてしまい、一人の客が食べる品数が目標より下回っている」と。あっさりするメニューを開発するのが急務となったのだ。

彼はやはり島根の農村を回り、味はいいのに売り物にならない食材(風で折れただけのネギ、モグラが近くを通ったために根が歪になった大根など)を仕入れ、煮物や野菜(例えばトマト)てんぷらにすることを提案したのだ。お蔭で客からも好評で、一人当たりの注文点数は増えていた。これは大正解。

きっとこういうやり方は多くの漁港とレストランで成り立つはずだ。是非、真似でいいので多くの地区で実行して欲しい。