日本にはグローバルビジネスの社長候補が少ない!?

グローバル

NHKの番組「クローズアップ現代」の「社長がいない 求むグローバル時代の経営者」という番組を観た(いつものようにビデオ録画なので、いつの放送かは不明)。

番組全体としては、今後の多くの日本企業においてはグローバル経営ができる素養・経験を持った経営者が必要であるが、社内でそういう人材を育てるには意識して若い時から人材を育てるために場と機会を与える視点が必要だし、社外からも人材を導入する積極性が必要という、ごくあたり前の結論であった。それでも、その線に沿って社長候補を育てている資生堂やソフトバンクの事例が後半に紹介され、興味深いものであった。

しかしこの番組の中で最も小生の興味を引いたのは、前半にあったユーシンという自動車部品メーカーの社長公募の話である。メーカーとしてはそれほど小さくはなく、大手といっていい。実は小生もある人材紹介会社からこの公募の話を聞かされたのでよく覚えているが、後日談は聞いていなかった。その話が番組の中で紹介されたのだ。

募集当時の社長が今も社長に復帰していて、そのときの公募の動機などを話しており、さらにグローバル展開を一挙に進めたいと考えたなどの思いを語っていた。しかし番組の中で驚いたのは、結局採用されたのは元外務官僚だということだ。そしてその人物は同社の経営をできずに、何と1年ほどで辞職したということだ。

何が呆れかえるかというと、グローバルで展開している大手自動車部品メーカーの経営トップとしてビジネス経験のない人間を選んだということだ。きっと語学力や外人との交渉経験で選んでしまったのだろうが、何と愚かしい選択をしたものか。当人たる元外務官僚も身の程知らずだと思うが、きっと受験勉強もでき、優秀と云われてきたのだろうから無限大の自信があったのだろうから、同情の余地ありである。

まず呆れかえるのは、その前(というか現)社長および取締役たちの不見識である。このメーカーがそれなりの規模にまで伸びたのは、たまたま時代が押し上げてくれたに過ぎず、間違いなくこの人たちの手腕ではなかろう。どうしてビジネスの戦略策定や計画実行の経験もない人間がいきなり経営トップとしてグローバルの経営手腕を発揮できる、などという夢物語を描けるのか、神経を疑わざるを得ない。

もう一つ指摘しておきたいのは、このヘッドハンティングをサポートしたはずの人材紹介会社の不見識である。そんな語学能力だけでビジネスのトラックレコードのない人物を紹介し太鼓判を押すなんて、プロとして恥ずかしいと思わないのだろうか。日本のこの業界の人たちの不見識の話は時折耳にするが、ここまであからさまに酷いというのは少々哀し過ぎる。

この番組が示唆している「日本にはグローバルビジネスの社長候補が少ない」ということは根も葉もない嘘だと思う。小生の知っているだけでも候補者は結構いる。問題は、そうした人材を発掘し評価する眼力が、現経営者およびその支援者である人材紹介会社側に滅多にないのである(だから語学能力のように本質的でない部分が重視されるのだ)。それが日本の不幸だと思うのは小生だけだろうか。