北陸新幹線開業のもたらすもの

ビジネスモデル

昨夜は大学時代の自動車部のOB会(ただし年次の近い分科会)でした。仕事を途中で打ち切って駆け付ける羽目になりましたが、随分久しぶりの人もいて、楽しみました。

その中に富山から駆け付けた先輩が一人いました。地元で親からの商売を継いだ方ですが、教育委員長も務めておられます。一昨日は教育委員会の仕事で上京し、一旦日帰りで帰郷し、再度昨日は会社の仕事で上京して最後にOB会に寄ったという次第です。

なぜ東京で宿泊しなかったのかという疑問には、「教育委員会の仕事と会社の仕事と、経費の出所が違うので、きっちり分けるためだ」というお答でした。なるほど律儀なことだと納得しましたが、ある意味、だからお役所の仕事は非効率なのだ、とも思いました。

そして、この先輩はスケジュールの都合で、一昨日と昨日の往復にはそれぞれ北陸新幹線と航空という別の方法を使われていて、直近の比較ができたわけです。

新幹線は新しいのと落ちる心配が皆無ではありますが、富山~東京間で所要時間が約2時間15分(従来は3時間半から4時間弱ほど掛かったと記憶しています)、指定席で12,730円です。それに対し航空(ANA便)路線では飛行時間は約1時間ですが、富山市内~空港、羽田空港~東京都心で約1時間はかかりますので、トータル2時間程度になってしまいます。つまりスピード的には大差なくなっているのですね。

むしろ本数が多くて遅延の心配がない新幹線のほうが、ビジネスパーソンには有難いでしょう。そうした背景があって、新幹線開業に対抗するため、ANAはそれまでの片道約1.8万円の航空運賃を一気に何と9千円に半減させたそうです。つまり新幹線より安いのです。若干でも速いのに、です。露骨な対抗策ですが、これが自由主義経済のダイナミズムですよね。

ただしそれでも旅行のピーク時を除けば、航空客は3割程度落ち込んでいるそうです。旅客が航空から新幹線にある程度はやはり流れているのですね。新幹線開業で東京から北陸に向かう全体旅客数は増えたわけではありますが、その大半は新幹線がかっさらい、わざわざ航空を使うのは従来から使っていた(しかも各空港から相対的に近い拠点の)ビジネス客だけなのでしょう。

お蔭で航空需要は落ち込み、首都圏・関西圏と北陸を結ぶ路線の多くで、減便もしくは場合によっては廃線になりそうだということでした。富山に限らず北陸の地方空港の存続は元々かなり地元自治体からの補助金に支えられていますので、地元自治体は今、必死になって役所内と地元企業に対し出張には航空を使うよう、キャンペーン活動をしているそうです。こないだまで新幹線開業と駅開設を躍起になって誘導していたのに、何と先が見えない、そして一貫性のないことでしょう。

ちなみに教育委員会の委員長という役職は、法制度が変わったため、やがて順次廃止されるそうです。知っていましたか?