ミシンに見る日本製の競争力と日本人の価格交渉力

グローバル

NHK「エキサイト・アジア」は、「アジア各国で奮闘するビジネスマンのドキュメント・マガジン」と称して、日本人が頑張っている様々なアジアビジネスシーンを見せてくれるので注目の番組である。

5月18日(土)の「第4回」はバングラデシュで日本のミシンを売り込む営業マンのシビアな交渉を採り上げていた。今や中国を追い抜いて「世界の縫製工場」の舞台となったバングラデシュで、圧倒的なシェアを持つ日本のミシンメーカー、JUKI。その駐在責任者が日々取り組む交渉最前線をカメラが追う。

彼らは代理店網を使い、バングラデシュ市場開拓を進めている。新工場をどんどん増設する縫製業者からすると、性能がよく品質も高い(つまり壊れにくい)日本製の業務用ミシンは「バンバン稼ぐ」にあたって頼りになる道具だ。したがって結構引き合いがあるのだ。

しかし他の日本製品と同様、価格的には割高感がある。そのため買い手(縫製業者)は代理店に思い切り値下げさせようと圧力を掛けるが、メーカーは代理店にはあまり価格交渉の幅を持たせていない(持たせるとすぐに値下げするからだろう)。そのため代理店からのヘルプ要請が入り、JUKIバングラデシュの責任者が呼ばれる(ダッカ市内は渋滞がひどく、本来20分程度の距離に時には1時間半も掛るという。かなり効率は悪そう)。

代理店同席の場で、買い手との間でシビアな価格交渉が始まる。買い手は安さで売り上げを伸ばす中国や台湾のメーカーから出た具体的な提示価格を口にし、何とかJUKIに同じまたはそれ以下の価格を提示させようとする。しかしJUKIの責任者は最初から安値は提示しない。かなり強気の値段をまず提示する。買い手は「お宅も作っているのは中国じゃないか。同じくらい安くなるだろう」と迫る。しかしJUKIの責任者は「我々は日本で研究開発している。品質もいいし保証もしっかりある。これは日本製品だ」と主張し、最後に「でも折角呼んでいただいたので、ベストの価格を提示する」と、少し妥協する。

この交渉場面をそのまま放送しているのは(中国メーカーに筒抜けにならないかと)少し心配にもなるが、非常に臨場感があって面白かった。JUKIの責任者はブロークンな英語ながら極めて「背筋の張った」主張をしており、頼もしく感じた。

時には中国メーカーとの価格の開きが大き過ぎるとして失注することもあるようだが、プレミアム価格は概ね受け入れられており、シェアはナンバー1だという。このJJUKIミシンのように2割程度のプレミアムであれば、日本製も中国製と互角以上に戦えるということだ。