「アンプのサンスイ」の栄枯盛衰

ビジネスモデル

少し前、サンスイの破綻に際し元社長のインタビュー記事がビジネス雑誌に載っているのを読んだ。89年にサンスイが外資投資企業傘下に入ったことがセンセーショナルに歩道されたことを思い出したが、記事によるとその経緯が説明されていた。

元社長によると、その破綻の原因は4つ。①安価な一体型オーディオ製品の登場。②上場後の拡大路線で価格競争に陥ったこと。③急激な円高。④労働問題で足を引っ張られたこと。他の業界でも苦労しながら対処した③を除けば、同情の余地はない。

①は他の業界でもよくある話だが、そこでの対応策は何とビデオデッキなどの多角化で傷口を拡げただけだったようだ。②は同質化競争に陥っていたのが本質的な問題であろう。「専業メーカーでありながら…付加価値を高める勝負ができなくなり」、「操作ボタンの数で価格が決まる」というばかげた状況に陥ったとある。これは今の家電業界でもよくある誤りだ。

④は自社内の話であり、労使協調ができなかったのはいかにも経営力不足だったことを露呈している。事実、74年には労組幹部を罠に掛けて逮捕させたことで当該役員と創業者が引責辞任を余儀なくされたらしい。その結果、労使対立が決定的になり、職場で製品開発に力を注げなくなったことを同氏は嘆いている。

そうした結果、同社は外資傘下に入るのだが、その経営者がインサイダー取引で逮捕され、次の救世主・アカイHDも、それを飲み込んだ香港GHDも同様に破綻するという災厄に同社は見舞われる。確かに多重事故に遭ったような悲劇ではあるが、日系専業電気メーカーが似たような七転八倒を繰り返すのを見るにつけ、何か共通項を感じざるを得ない。それは技術力と生産性にのみ注力し、戦略眼とリーダーショップに欠ける経営者の犠牲になった社員の悲劇という共通項である。