ASEAN・インド市場を切り開く地道な努力

グローバル

夜のワールドビジネスサテライト(WBS)は、2夜連続の「躍進!ASEANを拓く」と題してアジア新興国市場での日本企業、特にホンダの挑戦を追うもので(メインキャスターの小谷真生子さんが現地を取材)、興味深く観た。ホンダはタイで自動車も二輪車もトップの地位を占め、他社からターゲットにされているし、元々あまりオープンな企業ではないのに、今回はWBSの取材にかなり協力的に情報公開しており、驚いた。

最初は、タイ現地でいかに日本車に人気があるかという今さらの内容だったが、アジア専用車を(日本発の車をベースにはするが)タイの開発拠点(ホンダアジア太平洋技術研究所)で開発している様子が映された。CATIAでの3D設計現場や、デザイン部門でのベースとなる「ブリオ」(日本用ハッチバック)と「アメイズ」(ASEANとインド用セダン)変更部分も映された。小生は以前某メーカーのデザイン部門でコンサル仕事をした際の厳重な警戒ぶりを思い出した。

面白かったのは、タイの技術者がインドで聞いてきた地元ニーズのポイントは次の2つだという。まずトランクルームにはキャスター付きキャリーバッグ(ある程度大きいサイズだった)が4つ入ること。男性がターバンを頭に巻いた状態で後部座席に座れ(その高さがある)、しかも座席で足を組めるスペースがあること。ちょっと笑えるが、確かに(日本にいては分からない)現地のニーズである。

もう一つ面白かったのが、ミャンマーにおけるホンダの二輪車マーケティング部隊の動きだ。地元で圧倒的なシェアを持つ中国製コピー車は本物の3分の1程度の価格で売られているが、外観はそっくりだが中身は全然違う。例えばAT(automatic transmission)という表示がコピーされているが、マニュアル・ミッションだ。それにプラスチックカバーの透明度が数年で劣化し計器が読みにくくなることも現物で見せてくれた。いかにも「安物買いの銭失い」なのだが、初めて買う消費者には必ずしも知られていない。

本物のホンダの二輪車にずっと乗っているホンダ・ファンはそうしたことを分かっているので、「乗り心地がずっといい、故障が少なく修理代があまり掛からない」などと語っていた。ホンダはこうした品質の違いに加え、(タイから技術者を呼び寄せて研修し)メンテナンスサービス技術を上げることで、安い中国製コピー車との差別化を狙っていることがよく伝わってきた。地道な努力だが、車台や部品共通化などのコスト削減、そしてタイの従業員の力と合わせることで達成できることを期待したい。