知らない間に知らない人と結婚していませんか?

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小生にはある自治体の住民課に勤めている親戚がいます。昨年、法事で色々と会話している中で大いに盛り上がった話題の一つに「本人が知らない間に婚姻届が出されるリスクがないのか?」というものがあります。

日本ではそういった犯罪が数年前までには散発(実は多発?)していました。最近注目されているのは、海外からの就労者が違法に滞在期間を延ばすことなどを目的にした日本国籍を取得する方法の有力な一つに「日本人との偽装結婚」があったからです。もっと深刻なものとして、保険金殺人の対象にするために戸籍上だけの夫婦にしてしまうとか(小説「絶叫」などで詳しい)、違法な財産取得のため身寄りのない高齢の資産家が狙われたケースもあるみたいです。

当時は日本の役所は「性善説」に基づく手続きで、嘘の婚姻届が出される可能性をまったく考えておらず、疑うことなく無条件に届け出を受理していたのです。

でも虚偽の届け出による偽装結婚が続出し、保険金犯罪や違法な国籍取得が幾つか明るみに出たため、国会などで問題になったようです。その「汚れた戸籍」を元通りにするための手続きもようやく対処されるようになっています。

ある時期から総務省は全国の自治体に対し、1)婚姻届の提出時に結婚する「当事者」と主張する人物が本人である確認を取ること、2)仮に提出時に「当事者」の片方しか現れない場合、一旦受理しても後日もう一方の「当事者」に郵送等で意思確認をするよう促しているそうです。

一見、これで万全のように思えますよね?でもそこで小生と親戚の間で「もし悪い連中が今の仕組みで偽装結婚しようと考えたらどうするか?」の議論が盛り上がったわけです。

例えば金融機関は借金をする人たちから身分証明書(免許証、保険証、パスポートなど)のコピーを受け取ります。真っ当なところならきちんと管理するでしょうが、街金の中には管理がずさんなところもあるでしょうから、そこに勤める悪い奴等(またはその経営者自身)がそのコピーを添付して役所に婚姻届を提出したらどうでしょう?

もちろん役所に出現する片一方の「当人」は本人で、悪い連中にそそのかされて片棒を担ぐわけです。彼女の身分証明書や印鑑・署名は形式上正当です。彼女は言います。「彼は忙しくて今日は一緒に来られません。でも本人の意思はこの身分証明書(のコピー)が示してくれています」と言えば、役所は一旦受理します。

その後、役所は総務省のガイドラインに基づき、もう一方の当人宛に郵送で確認書を送ります。「あなたは何月何日、誰々と結婚するという婚姻届けを〇〇市役所に出しました。これに間違いはありませんね?」と。

もちろん、こんな確認書が届いたらあなたは仰天して、その役所に即座に電話するでしょう。「とんでもない。そんな女性は知らないし、僕は婚姻届にハンコを押した覚えもない」と。

でもその確認書はあなたのお住まいには届かないのです。連中は婚姻届を出した直後に郵便局に「転送届」を出しており(本人の意思を確認せずに転送届を有効化するこの部分が実は最大の問題です)、しばらくあなた宛の郵便物はことごとく連中の事務所あたりに転送されます。件の役所からの確認書を含め、です。

かくしてあなたは婚姻届のことなどまったくあずかり知らぬまま数年後、バラ色の夢を描きながら婚約者と一緒に某役所に出向いて婚姻届を出そうとします。そしてその場で夢想だにしない言葉を役所の窓口担当から言われるのです。「あのー、この婚姻届は受理できません。日本では重婚は禁止されておりまして…」と。なかなかシュールなシチュエーションですね。

仮に身分証明の手段がマイナンバーになろうと、郵便局の「転送届」が本人からの届け出を確認するシステムにならない限り、本質的には同じ犯罪が繰り返される恐れがあります。消費者金融などを利用した方は、たまには自分の戸籍を確認したほうがよさそうですね。