進化するパーク24は競合だけでなく自動車メーカーも脅かす

ビジネスモデル

8月7日 に放送されたカンブリア宮殿は、パーク24の西川光一社長を招いての「進化が“止まらない”!知られざる駐車場ビジネス」。決して「知られざる」内容ではなかったですが、このビジネスのポテンシャルに改めて感心しました。

パーク24が運営するコインパーキング「タイムズ」。現在、全国46都道府県に約1万4000か所を展開。業界のパイオニアであり、最大手です。1971年、創業者・西川清は、駐車禁止の看板を販売する「ニシカワ商会」を立ち上げました。当時は高度経済成長期、違法駐車が社会問題化していたのです。清の読みは当たり、看板の注文は殺到。その後、街で見つけた自動式車止め「パークロック」の代理店販売で会社を急成長させます。そのパークロックを使い1991年に誕生させたのが、日本初の「無人時間貸し駐車場」。その後タイムズに名称を変え、全国に拡大したのです。

その後、現社長の光一氏が入社し、営業本部長となった2000年頃には、3000ヶ所以上に拡大。しかし当時、光一氏は危機感を感じていたといいます。なぜなら、実際に現場に行かないと、駐車場がきちんと稼働しているか分からないのです。故障はお客のクレームで初めて分かり、売り上げも集金をしないと分からない。そんな状態に危機感を抱いた光一氏は、40億円をかけて自前のITシステムを導入することを提案。しかし、創業者の先代社長からは猛反対を受けます。そりゃそうでしょう。当時の会社全体の利益は約20億円。会社が傾きかねない投資額です。しかもそれがなくとも会社は回っていたのですから、「何を好き好んでバクチを打つのか」と誰もが思ったのでしょう。

それでも何度も必要性を訴える光一氏の熱意が認められ導入が決定します(父親は光一氏の本気度を試したのかも知れません)。そして3年後、自社で開発したTONICというシステムが誕生しました。最低限の機能をカバーするだけなら半分の金額で済んだはずと光一氏は言います。全国の駐車場と本社をオンラインで結び、リアルタイムで管理するほか、車1台ごとの稼働状況や売り上げの推移がわかるようになっており、それを参考にレイアウト変更などのテコ入れをできます。今では、“売れる”駐車場に欠かせない秘密兵器となっているのです。

パーク24は、多い月で300ヶ所のタイムズを誕生させています。その開発を任されているのは、全国に350人以上いる営業部隊。担当地区をくまなく回り、「その街の不動産屋より詳しくなる!」をモットーに、日々新物件を探しています。街で「閉店した店」を見つけると、すぐさま登記簿を取り寄せオーナーに交渉。さらに、人気の飲食店の周辺や工事関係者が多く集まる工事現場の周辺など、人が集まる“目的地”をくまなく探すのです。 タイムズは、そうした目的地から半径200m以内に、小型駐車場を点在させ、需要を掘り起こしています。

運営方法は、オーナーから土地を借り、毎月、一定の賃料を支払うというもの。解体・舗装代以外の工事費、管理費などはすべて同社で負担するため、オーナー側のリスクはとても少ないです(これ、知りませんでした)。逆にタイムズ側は、毎月、安定した収入を上げることが必須のため、既存の駐車場の料金の見直しやレイアウトの変更などの改善に余念がないわけです。だからこそTONICが必須であり、武器になるのですね。

パーク24が今、最も力を入れているのが、カーシェアリングです。いわば会員制のレンタカーです。パーク24は全国に駐車場を持っている強みを生かし、現在5500カ所のタイムズにカーシェア専用車を置きます(弊社のオフィス近くにもあります)。小型車だけでなくファミリーカーや外車に至るまで約30車種、合計9000台以上を揃えます。参入からわずか5年で会員は36万人。後発ながら業界のトップです。

元々は主婦を中心に人気だったカーシェアですが、最近では車が欲しくても経済的に厳しい若者の需要も確実に取り込んでいるようです(そんな若者たちが遊びに出掛けるのに一緒に使っているのを紹介していました)。「一番の優位性は、14000ヶ所の駐車場を既に持っていることだ。簡単、便利、使いたい時に使える。コンビニを使う感覚で使ってほしい」と光一氏は言います。確かに、これ合理的なカーライフです。小生も近所にあれば使いますもの。自動車メーカーからすれば(車を保有したがる人が減るので)大いに脅威です。