長く愛されるいい品だけを扱う店は幸いなり

ビジネスモデル

10月1日(木)に放送されたカンブリア宮殿は「長く使える良いものだけを売る!感動百貨店の新戦略」と題し、D&デパートメント会長のナガオカケンメイ氏がゲストだった。この雑貨店の名は知らなかったが、とても興味を覚えた。

東京・世田谷の住宅街に「D&デパートメント東京」という生活雑貨店があり、とても人気だという。売られているのは、60年前から作られ続けている鍋や、50年前から形を変えていない醤油差し(でも液ダレしない)、業務用で無骨だが頑丈・実用的など…消費者から長く愛される生活用品を揃えたユニークな店だ。

どの商品も、一見地味だがシンプルで飽きが来ず、使い勝手を考え抜かれたものばかり。しかも、店員はただ売るだけでなく、歴史や作り手の思いなど「商品の物語」も一緒に伝えて売っている。業務用品の中には本来とは違って生活の場で使うととても素敵で役に立つ、そんな提案もある。そんな品々と売り方に共感した多くの若者が、並べられた商品を次々と買っていく。

そんなD&デパートメントを全国チェーンに育てた男こそ、デザイナーである創業者・ナガオカケンメイ氏(50歳)だ。店を通じて「長く使えるいいもの」の良さを伝えることで、消費者の意識改革を目指しているという。

新たなデザインが次々と打ち出される現代。消費者は流行の最新デザインを追い求め、毎シーズンのように“もの”を買い替えていく。そして、作り手も「大量生産・大量消費」という社会の波に乗り、毎年、買い替えられる「安くておしゃれなもの」を生み出し続けている。デザイナーとしてそんな“短期消費型”の片棒を担いでいた自分の仕事の存在意義と世間の風潮に強い疑問を感じ、ナガオカ氏は新たなビジネスを立ち上げたのだ。

現在、国内外に12店舗を展開(うち国内10都市にはチェーン展開)しているD&デパートメント。全て同じコンセプトで展開をしているのだが、東京と地方では品揃えが大きく違う。ナガオカ氏が是非お勧めしたい商品はもちろん含まれているのだが、地方のD&デパートメントには「その土地らしさ」が色濃く出る地域の逸品が数多く揃えられているのだ。

これはいい。これは地方に住人が地元のよさ、地元で細々ながら作られてきた「今まで隠れていた、でもいい品」を知るきっかけになる。下請けに甘んじてきたが本当に腕の立つ職人が作るいい品というのが地方には多くあるのだ。

地方の店の多くはFC制で運営されているが、ナガオカ氏は、そうした地方のFC店を“地域の良さを伝えて、地域を活性化させる場”と捉えて、少しずつ増やしてきた。もちろん、店を任せるオーナーは、地域の活性化に強い意識を持つ地元の人と面談して選りすぐっている。そして3つ目のFC条件の一つは必ずカフェを併設すること。「カフェに寄ったら隣にいい品が見つかった」というのが理想だという。

「店を地域の情報を発信できる場にする、そして、そんな店を全国47都道府県すべてに展開したい」というナガオカ氏の構想は、少しずつ形になろうとしている。是非、実現して欲しい。