相撲界の知られざる、そして人間くさい実態

ビジネスモデル

今夜はある勉強会の会合で、元小結&相撲解説者の舞の海さんのお話を聴く機会がありました。中には脚色されているのもあったと思いますが、非常に面白いトークでした。アスリーツの世界でありながら興業の世界であり、しかも日本古来の神儀の要素が色濃く混じった、やはり特異な世界ではあるのですが、人情は同じという、とても興味深い世界です。

色んな面白いエピソードがありました。例えば:
– 十両以上だと給料が出るが、幕下以下だと手当しか出ない。すると(独身のときなら部屋付きで我慢できるが)家族を養えないので、引退せざるを得ない。これが多くの力士の引退の本当の理由。
– 参加者の人数が非常に限られているので、互いの家族事情も筒抜け。「今度結婚する、子供が生まれる」「部屋を継ぐ」「子供が小学校を卒業する」とかいう事情を互いによく知った上で、しかも時折一緒に飲みに行く仲のよい連中が対戦している。
– 永谷園は長年懸賞金のスポンサーとして定着しており、一つの取り組みで1本6万円懸賞金を人気取り組みには5本出すのを基本パターンにしている。5回も連呼されるスポンサー名を聞き逃す人は少ない。しかもあのパッケージデザインが5つも続くので目立つ。それを多くの注目取り組みで何度もやる。そしてNHKが公共の電波で全国、全世界に配信している。マスメディアでの宣伝なら数億円の効果があることを数百万円で毎場所実行している(最近はタマホームなど真似するところも出てきた)。
– 日本の力士が弱くなり、モンゴルなど海外出身の力士が強くなったのは当然。ハングリー精神が全く違う。途上国出身の力士は親兄弟に仕送りし、国に凱旋するために必死で這い上がろうとする。日本の若者は親から「辛かったら我慢せずに帰ってこい」と言われ、ひどい場合には、親方に連れられて来た日に奢られるだけ奢られて辞める例さえある。番付が上がってからも違いが凄い。特に朝青竜。こちらが「何とか勝ちたい」程度の闘争心なのに、彼は「こいつは母親を殺した敵だ」と想像して殺してやるつもりで掛ってくるのだから勝てるわけがない。
– 三賞の賞金は200万。多いようだが、5~6人の大食漢揃いの若手を焼き肉とラーメン屋、そしてスナックに連れていっておごるだけで、一晩で消える。やはり相撲取りは飲み食いする量が違う。なにせ親方も「現役のうちにはちまちま貯金なんかするもんじゃない」と言い、若手連中は奢って欲しくて、仲間同士で聞こえよがしに「まさか貯金するんじゃないよな」と言うから、そのプレッシャーに負ける(若手を怒らすと、ちゃんこ鍋に虫などを入れられたり、稽古内容を対戦相手に教えられたりするかも知れない、と冗談を言っていました)。
などなど。