焦るトランプがもたらす新たな混乱の予感

ブロググローバル

昨日(正確には米国時間の一昨夜)の大統領候補同士の討論会はかなり酷かったようです。時間がなくて一部だけですが、私も中継放送を観てみました。なるほど確かに「泥仕合」という日本の報道機関の多くが使った表現も全くの間違いではありませんが、それはバイデン候補に対しアンフェアです。

ほぼ一方的に不規則発言を繰り返していたのはトランプのほうで、バイデンは途中まで発言に割り込んでくるトランプを無視していましたが、あまりに何度も邪魔されるのでさすがにうるさくて「黙ってくれ」と制止したというのが事実ですから。

それで少し怒りを覚えたのか、バイデンも段々表現が直接的になっていき、トランプのことを「嘘つき」とか「最悪の大統領だ」とか露骨に非難しましたが、この辺が「泥仕合」とされたのでしょう。でも少なくともバイデンは討論会のルールに対し違反はしていません。「相手が話をする2分間は邪魔しない」というルールを何度も破ったのはトランプのほうです(そのため次回の討論会では何らかの制御ルールが導入される模様です)。

バイデンはトランプに「ルールも守れないのか!」と一括すべきでした。「嘘つき」とか「最悪の大統領だ」とか言うよりも、あの場では効果が高かったでしょう。

全米でこの討論会を観た視聴者の感想の大半は「ひどいものだ」「恥ずかしい」というまともな感覚がさすがに多く、どちらが優勢だったかという評価でもバイデンが6%程度多かったようです。

しかしその差分の数値は討論会前の両者の支持率差とほぼ変わっていません。つまり討論会でのトランプの「横紙破り」(ルール無視)の態度・行状に対しトランプ支持者は愛想をつかす代わりに、「トランプらしい」とむしろ賛辞を送っているのが実態だということのようです。

この結果も踏まえ、知識人の人たちからすると「ここまで馬鹿げた大統領を世界にさらしてしまったこと、そしてそんなみっともない大統領を選んでしまった(今回も選ぼうとしている人が半分近くもいる)という点で、米国民として恥ずかしくて仕方ない」といったあたりが本音だと、知り合いが教えてくれました。

今回の討論会を観て改めて思ったのはトランプの性格の幼稚さです。大金持ちで、ずっと甘やかされ過ぎて育った典型的なspoiled boyである悪ガキが、ホームルームでクラスメートから非難され、自分もその非難の言葉を聞きたくないし、他のクラスメートに聞かせたくなくて、クラスメートの非難の上に声をかぶせるようにわめいている場面が目に浮かびました。

 

もう一つ、今回の討論会で改めて確認されたのが、11月の選挙でもし負けてもトランプは敗北を認めずに居座るつもりだということです(バイデンは「もし選挙で負けたら認める」と明言していますが、トランプは「結果がおかしかったら大規模な不正があったことになり、認めない」と主張しました)。

民主主義が定着していない発展途上国では時折起きる光景ですが、米国で2人の大統領が並立する事態になったら、その間は誰が何をどう意思決定し、その事態はどう解決するのでしょうか。米国憲法にはそんな事態を想定した規定はないはずです。

トランプは負けたら「大がかりな選挙違反があった」と主張して法廷闘争に持ち込むつもりのようです。「最終的には最高裁で決まる」とまで断言しています。その来るべき裁判で保守派を圧倒的に増やすため、今の自分の任期中に最高裁判事(候補者はバリバリの保守派でトランプ支持派です)の新任を認めようとしています。辻褄は合いますね。

そこに至る前に共和党の幹部たちがトランプの暴走を止めることができるか否か、ある意味、見ものです。でもその間、中国が好き勝手するのも目に見えていて、恐ろしい話です。