政府-日銀の「共同声明」の持つ意味

グローバル

政府と日銀は22日、デフレ脱却のための「物価上昇目標2%」を盛り込んだ「共同声明」を発表した。その中には2014年度から無期限で市場にお金を流し込む新たな金融緩和策を始めることも盛り込んでいる。今の日銀にできる精一杯の「大盤振る舞い」である。

つい半年前までの日銀の態度は、木で鼻をくくったように「デフレ退治は日銀の仕事じゃない」「今まで金融緩和を続けてきたのに物価はほとんど上昇しなかったのでインフレターゲットは有効ではない」「将来制御できないインフレが起きかねない」とずっと駄々をこねていたのだから、変われば変わるものだ。言いかえれば、ここまであの責任放棄体質だった日銀の態度を変えさせただけでも、安倍総理の強硬姿勢の演技力と覚悟は大したものだと思う。

この「アベノミクス3本の矢」がデフレ脱却に唯一有効である可能性があること、そして失敗したら日本経済と政府財政にとって致命的なリスクを抱えることはこのブログで何度も繰り返している通りである。しかしそうした懸念をさし置いても、この政策ミックスに断固として向かおうとしている安倍氏の「覚悟」を買いたい。失敗すれば歴史的には「浅はかな考えに基づいて日本の破たんの引き金を引いた政治家」と烙印を押されかねない、思い切った戦略を打ち出したのだから。

この日本の政策転換は海外でも非常に注目されている。日本の株式に投資するファンドが随分急増している(とはいえ連中は短期的な相場転換だけしか期待していないはず)ようだし、塩漬けされてきた日本の不動産に投資しようとする海外投資家の動きも報じられている。
http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/backnumber/20130121/

こうしたメディアの「デフレが終わってインフレが来そうだ」という煽りがデフレ脱却には一番有効なのかも知れない。実際、90年代の「デフレ突入」の最上級戦犯の一つは間違いなくTV・新聞などのマスメディアだったのだから(当のマスメディアには自覚はないだろうが)。

今後円安がさらに進むにつれて海外政府や特定業界からはごうごうたる非難が湧き起こるだろう。しかし一切無視すべきである。現状は、実力を無視した極端な超円高が終わっただけであり、1ドル100円を大幅に超えない限り適正レンジの範囲なのだから。

それによって韓国企業などと比べ理不尽に不利な立場にあった輸出企業がまともな水準の売上と利益を回復することで日本経済が息を吹き返せば、他の業界にも好影響をもたらし、うまくいけば景気回復にもつながる。そうした期待が盛り上がるだけでも違うのである。まさに「景気は気から」という言葉の通りなのだから。