戦略なきAI活用がもたらすもの

ブログビジネスモデルBPM

生成AIの普及により、現場でのAI活用は一気に広がっています。資料作成や議事録の整理、コードの補助など、さまざまな業務でAIが使われ始めています。社員一人ひとりが、手元の業務を効率化するためにAIを試す時代になりました。

一方で、経営陣が「どの領域でAIを積極活用すべきか」という指針を示している企業は多くありません。AIのリスク管理――情報漏洩や著作権、ハルシネーションなど――には目が向けられていますが、それ以前の「何のためのAI活用か」という本質的な問いは棚上げされがちです。

本来必要なのは、「AIでどうやって業務を効率化するのか」の前に「AIを使ってまで維持すべき業務は何か」を選び取る視点です。

効率化の対象を間違えれば、労力は減っても企業の付加価値は増えません。むしろ、価値の低い業務が高速に回ってしまい、結果として企業全体の生産性を押し下げる可能性すらあります。

「AIを活用せよ」というメッセージだけが独り歩きすると、現場はとりあえずAIを使う方向に走ります。しかしそこに戦略的な優先順位がなければ、AIは単なる“現状維持のための強化ツール”になってしまいます。本来なら見直すべき業務が、AIによって延命されてしまう恐れがあるのです。

今、企業に問われているのは「AIを使うこと」ではありません。「どういった価値に資するために、どこにAIを使うのか」を明確にすることです。AI活用の成否は、技術そのものではなく、使わない領域を決める意志にかかっています。