常態的インサイダー取引という実態

ビジネスモデル

今朝の記事で少々驚いたのがある。「公募増資をめぐるインサイダー取引問題」で、投資助言会社が株の売買発注を餌に、証券会社からのインサイダー情報の質や実績を競わせていたことが判明したのだ。

この投資助言会社はジャパン・アドバイザリー合同会社(JA社)。ヘッジファンドを運営する米大手資産運営会社「ホイットニー」の子会社で、JA社の社長は各証券会社では「キング」と呼ばれていたという。この「我儘し放題」というニュアンスの呼称は、こうした不正な取引が常態化していて、多くの証券会社の中で有名だったということを示唆する。

笑えるのは、JA社は証券会社を競わせるのに、「ウチは助言会社だから、インサイダー情報を教えてくれても罪にはならない」と言っていたという。詭弁もたいがいにせよ、と言いたい。まさか証券会社はこんな子供だましの言い訳が通じると思って、常態的にズルを助長させていたのであろうか。

国内で1千億円を超えるヘッジファンドがほとんどないため、JA社は圧倒的な存在感があったそうで、「最重要顧客」扱いだったのは分かる。だが、だからといって超大手顧客にだけインサイダー情報を流して儲けさせていたとなれば、許し難い犯罪行為である。証券会社は目先の自社の手数料を稼ぐためにルールを破っている訳で、日本市場が公正でないという定評を確立させ、市場が大幅に縮小した構造の片棒を担いでいるという意識はなかったのだろうか。矜持のかけらもない態度であり、情けない限りである。

さらに呆れかえるのは、こうした事態を受けて証券取引等監視委員会はJA社に、日本板硝子の増資の際の金融商品取引法違反の罪で課徴金を課すよう金融庁に勧告したとあるが、その金額やたったの37万円である。子供の遊びか、と言いたくなるではないか。金融庁は併せて、同社が助言会社なのに無登録でファンドを運用していたとして登録を取り消したとある。市場が信頼されないリスクを断固として排除するため、こうしたファンド会社や助言会社を徹底的に排除し懲罰的な課徴金を課すべきである。