体性幹細胞治療の抱える闇

ビジネスモデル

6月24日(月)放送の「クローズアップ現代」はあまり馴染みのないテーマ、再生医療トラブルだった。題して「追跡 再生医療トラブル~体性幹細胞治療の闇~」。

「体性幹細胞治療」とは、病気やケガで故障した組織や臓器の機能回復のため、患者のお腹の脂肪から幹細胞を採取し、静脈に注射で戻すやり方。再生医療のジャンルの一つだ。大学病院などで臨床研究が行われている段階で、効果や副作用がはっきりしていない“未知の医療”である。iPS細胞やES細胞とは多分化能の部分で異なり、俗にいう(骨髄移植で使われる)造血幹細胞とも異なる。

法的な規制がないため、「自由診療」扱いだが、現実に全国の美容整形や難病治療を行うクリニックでかなり実施されており、現在100を超える日本のクリニックが実施中とのこと。経験も知見もない医師が安易な心構えで実施した結果、患者が死亡したり失明したりするケースも起きているようだ。正直、全然知らなかった。

驚いたのは、規制のない日本に海外の業者が患者を送り込み治療を行うケースも急増しているとのこと。以前に問題を起こした韓国のRNLバイオという会社を通じて韓国から8000人もの患者が福岡の「新宿クリニック博多院」で治療を受けに来ているとの情報もある。そもそもこの「新宿クリニック博多院」というのがどうも胡散臭いのである。
http://n-seikei.jp/2012/12/post-13188.html
http://shinjukunews.com/archives/51752910.html

海外から来る患者は新興国や欧州などの大金持ちなのだろうか。番組ではロシアのバイオベンチャーが取材を受け、日本人医師向けのパンフレットを示して、既に数人の医師と契約したことなど、このビジネスへの取り組みの抱負を語っていた。

こうした「実験市場化」の状況に再生医療学会は警鐘を鳴らしている。万一重大事故が起きれば国際的な問題にもなるし、国内的にも野放しにはできない状況だ。国(厚生労働省)はついに先月、幹細胞治療に規制をかけるための法案を提出したが、この治療法に唯一の望みを掛けている患者たちがいることも事実。規制当局も悩ましかろう。

しかし別情報によると、神経再生等の効果は「微妙なもの」らしい。それでも患者は藁をも掴む気持ちで希望を託す。そして彼らの蓄えた、なけなしのお金を吐き出させるのが実態だという。もしその通りならば、効果がないものに高いお金を払わせる、ある種の詐欺行為ではないのか。日本の医療に対する国際的信頼を失墜させかねない事態だ。