住民に近寄ってこそ保育園は受け入れられる

BPM

10月29日(水)に放送された「クローズアップ現代」。題して「子どもって迷惑?~急増する保育園と住民のトラブル~」。

子育て環境を改善する政策方針の下、全国各地で保育園の建設ラッシュが続いていますが、建設地の近くに住む住民たちによる計画反対運動が多いといいます。親による送迎の自転車による事故を心配する声が大きいそうで、区の強引な進め方も反発を強める要因になるようです。

相次ぐ苦情のせいで、保育のしかたを見直さざるをえない保育園も出てきました。番組で紹介された例では、園庭で遊ぶ時間を厳しく制限。午後5時以降は子どもを出さず、苦情があれば日中でも利用させない日があります。極端なようですが、子どもの姿を見たくないという声を受け(これはどうかと思いますが)、日中でもカーテンを閉め、窓は目隠し用のシートで覆っています。それでも、この保育園に対する苦情は収まっていません。

横浜市内の保育施設では、「大声を出さない」「楽器を使わない」など、音が漏れるのを気にしている所が7割以上にのぼるそうです。こうした遊びを制限することは、発達段階の子どもたちにとってストレスになりかねません。

東京・世田谷区の住宅地の年代ごとの遊び場の場所を示したマップからは、子供たちの遊び場所がどんどんなくなり、2000年代になると子どもたちの姿が戸外に見えなくなると同時に、子どもたちの生活と大人の生活というのが完全に分かれてしまった様子が浮かび上がりました。単なるうるさい他人だと見えると、保育園が迷惑施設に感じられてくるという構造なのでしょう。

希望をもたらす例も紹介されていました。東京・世田谷区の太子堂地区に3年前、新設された保育園です。子どもたちが住民たちに対し「おはようございます!」と明るく元気に挨拶しています。地域の人たちからも温かい声を掛けられ、親しまれていることが分かります。

しかし実はこの保育園でも、5年前に建設を計画した時には地域住民の反対の声に遭いました。議論がこう着する中、地域の世話人が粘り強く話し合いを続けることを呼びかけたのです。区には計画の詳しい説明や住民たちの要望をできる限り聞いて欲しいと求め、住民たちには不安や不信感を素直にぶつけることを提案しました。話し合いを続けること1年、回数を重ねるうちに合意点が見出されました。

当初は道路に面していた園庭の位置を変え、声が外に直接響かないように変更しました。敷地を掘り下げ建物の高さを抑えることで、隣地の日当たりの確保にも努めました。こんな調子で変更点は7か所にも及びました。住民たちは、自分たちの意見に耳を傾ける姿勢に好感を持ち始めたといいます。さらに、話し合いの場に建設予定の保育園の園長や保育士が率先して参加していたことも、住民たちの心を動かしたそうです。

今では地元の祭りに参加するなど、この保育園は地域の重要なメンバーになっています。ここには住民の暮らしと保育園の新増設をどう折り合いをつけるか、の一つの答えがあると思います。多少のうるささはあっても(かくいう小生宅の近所にも日大中学と高校があり、地域に大音量のスピーカーが鳴り響いています)、地域の子供たちを自分達の宝として抱える喜びを住民には見つめ直して欲しいものです。