サッポロホールディングス(HD)が、ついに大きな決断を下しました。子会社であるサッポロ不動産開発を、米投資ファンドのKKRとアジア系のPAGが組む連合に売却することを決めたのです(この24日に発表)。
筆頭株主である3Dインベストメント・パートナーズから長年求められてきた懸案「不動産事業の切り離し」がついに決着した格好ですが、このニュースを私は複雑な心境で見つめています。
「甘え」の構造を断ち切れるか
今回の売却額は、借入金を含めて4,770億円という巨額なものです。段階的に出資比率を下げ、2029年6月には完全に手放す計画となっています。
これまでサッポロHDにとって、不動産事業は事業利益の約3割を稼ぎ出す「孝行息子」でした。しかし、その安定収益が皮肉にも、酒類などの本業における不振を覆い隠し、経営に「甘え」を生む原因になってきたという指摘は極めて妥当です。
実は、この「不動産事業を切り離し、経営資源を本業へフォーカスせよ」という主張は、私が1998年5月に上梓した著書『フォーカス喪失の罠』で提言した内容と全く同じです。 四半世紀以上も前から警鐘を鳴らしていた身としては、今回の決断は「ようやく」という言葉すら生ぬるい、「あまりに遅すぎる」というのが率直な感想です。
成長投資への自信の無さが透ける「1,000億円」
売却で得た資金のうち、3,000億〜4,000億円をM&Aを含む成長投資に、約1,000億円を2030年度までの株主還元に充てるといいます。
しかし、この1,000億円という還元額には、二つの懸念を感じざるを得ません。一つは、単に「物言う株主」におもねっている姿勢の表れではないかということ。そしてもう一つは、自社の掲げる「成長投資策」に、それだけの資金を使いこなす自信が無いことの裏返しではないかということです。
現在のサッポロは、国内ビール市場においてアサヒ、キリン、サントリーの3強に完全に水をあけられた「1弱」の状態です。飲料・食品事業も「いまひとつ」の状態で、国内での成長余地は極めて限定的と言わざるを得ません。
過去の失敗を繰り返さない覚悟はあるか
同社は今後の重点領域として、海外ビール事業やRTD(ふたを開けてすぐ飲める飲料)の強化を掲げています。しかし、その足跡は不安に満ちています。
- 2017年に買収した米アンカー・ブリューイングは2024年に解散。
- 2022年に傘下に収めた米ストーン・ブリューイングでも、早くも約139億円の減損損失を計上。
このように、海外事業での失敗が続いています。
不動産という「逃げ道」を失った今、これまでお世辞にも高いとは言えなかった「経営力」をどこに、どう注力するのか。
「遅すぎたフォーカス」ではありますが、踏み出したことは評価すべきでしょう。サッポロHDが真の意味で飲料メーカーとしての矜持を取り戻せるのか、まさに正念場に立たされています。
