リカレント・リスキリングの必然性

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ジェイフィールという調査会社が調べた『ベテラン社員および職場への感情調査』という調査結果がネット上に公開されています。

この調査の元々の問題意識は、タイトルにあるように「ベテラン社員の熱意や能力が落ちているのではないか、それにしたがって周囲との軋轢が高まってはいないだろうか」というものだったと推察されます。

しかしこの調査で浮かび上がってきたのは、皮肉にも(ベテラン社員ではなく)本来なら働き盛りである40代の社員のモチベーションがベテラン社員と同等以上に落ちているという事実です(実はまだ会社でのポジションを確立できていない20代社員も、40代と同じくらいモチベーションが低いのですが、それは最近の傾向ではなくかなり以前からなので、驚くことではありません)。

全体でも約7割の人が仕事への手応えややりがいを感じていないというショッキングな結果なのですが(これが日本企業の生産性の低さや低収益の大きな要因かも知れません)、「やりがいをまったく感じていない」という回答が最も多かったのは40代で、50代の非役職ベテラン社員の13%前後を大きく上回って、何と20%にも上ったのです。

この調査の対象は従業員数300人以上の民間企業の正社員です。その40代といえば「就職氷河期世代」でありながら、回答者の大半は当時としては就職に失敗しなかった「勝ち組」だったと目されます。少し上の「バブル世代」に比べて能力が平均的に高く、少数精鋭で早くマネジャーに昇格できると言われ続けていました。それがなぜこんなにやる気を失っているのでしょうか。

調査を担当したキャリアコンサルタントやその監督をした大学教授などのコメントを調べてみると、次のような状況だとのことです。

「この年代は、日本企業で年功序列の解体が進み、『失われた20年』に直面して業績が伸びずに多くの組織で統廃合が進んだ結果、昇格チャンス自体が少なく、多くがプレイヤーのままか、精々プレイングマネジャーとなっている。そんな中、やれDXだAI活用とか、これからはジョブ型人事制度だ、在宅勤務でも部下を管理せよ、などと社会変革と働き方改革がいっぺんに押し寄せている、そのあおりを最も受けている世代だ」

実際、世間が思っているほど中堅社員の転職率は高まってもおらず、ましてや大企業の40代社員のキャリアイメージは相変わらず、一つの会社で同じ畑で専門性を磨き、その先で管理職を目指すという、我々旧世代が描いていたキャリアパスの常識(私自身はまったく違いましたが)からそんなに変わってはいないようです。

そしてデジタルスキルを極めようとか、海外のビジネススクールに留学しようとか、現代社会を生き抜くための強い意志と行動力を見せてくれている人はほんの一部です。

でも、もはや同じ会社で昇格・出世といった従来のキャリアの常識にとらわれ続けていたら、それは幻のまま終わる可能性が非常に高くなっていると言わざるを得ません。その通りにならない自分に強い不安が生まれ、仕事に前向きになれないのも理の当然です。

今、40代およびそれ以外の世代にも共通して必要だと言えるのは、思い切ったリカレント(学び直し)であり、リスキリング(新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと)です。

なぜなら従来の仕事のやり方の前提の多くが既に吹っ飛んでしまっているからです。

例えば、男性中心の体育会系的な根性主義、年齢を重ねることで得られる経験則を物差しとする考え方、昼間の会議でなく夜の飲み会でしか本音が聴けない偏ったコミュニケーション、紙とボールペンで書き写してファクスで伝えるアナログ伝達主義、何事につけ面談するか電話でいちいち話すことで意思を共有する仕事の進め方、等々。

部分的にはなかなか情緒がある反面、これらに浸かっているだけでは世界の競合にはまったく太刀打ちできないのが現実です。

より科学的で効率的、かつスピード感と網羅性のある仕事のやり方に大きく切り替えていかないといけないのが現代のビジネス状況です。そしてそれを主導的に引っ張っていくべき存在が40代の人たちのはずなのです。

そのためには今までのぬるま湯的な常識に浸ることなく、思い切って新しい世界に飛び込んで自らの知識・スキルを塗り替えるしかないのではないでしょうか。怖くても踏み出せ、40代諸君よ。