ライザップのM&Aの勘違い

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ご存じの方も多いと思いますが、「結果にコミット」で有名なトレーニングジム大手・ライザップが再建中です。同社は短期間に急成長した勢いそのままに、大方が危惧する中、多くのM&Aを実施し(主なものだけで23社もあったそうです)、直近の業績は見事なほど大コケし、株価も急落しました。

 

その結果、買収した子会社の大半を再び売却するか、清算するかしており(これは前カルビーCEOの松本氏が同社顧問に就任した直後から進言した模様です)、同社瀬戸健社長のM&A戦略は完全に頓挫したと言ってよいでしょう。

 

何がまずかったのでしょう。ほとんど全てといってよいかも知れません。

 

本業および同社のコアコンピタンスと何の関係もない事業会社を(恩ある人に頼まれたのか、M&A仲介会社に持ち込まれたのかは分かりませんが)、いくら割安だからといってホイホイと買って、簡単に再建できると考えた神経がどうかしています。

 

私が何度もセミナーや記事、メルマガで指摘しているように、買収するべきは「持ち込まれた」案件ではなく、こちらから「欲しい」と申し込むような案件であるべきです。即ち、自社のフォーカス戦略上、コア領域に存在して、その地位を自社がゼロから築き上げるのにはあまりに時間が掛かり過ぎる場合、「時間を買う」戦略としてM&Aは有効なのです(興味のある人は羅針盤倶楽部に是非入会して研究してください)。

 

つまりM&Aはあくまで手段であり、自社のフォーカス戦略が先にありきであるべきなのです。ライザップがやろうとしたような、「割安に買収して、短期間で再建することで利益を上げよう」などというのは邪道中の邪道です。

 

それにずっとその事業をやってきた人たちがうまくいかないで傾きかけている会社というものは組織・人材および経営チームに大きな問題を抱えているものです。もちろん、新しい経営チームが乗り込み、正しい戦略を練り、現場の人たちの意思を統一することができ、しかも買収した側に特別なレバレッジ手段があれば可能性が拡がることは事実です。

 

でも普通の事業会社の人がたまたま自社で成功したからといって簡単に他社を再建できる訳ではありません(私自身も最終的には成功したといえ、苦労した覚えがあります)。ライザップの経営陣はあまりに事業経営というものを舐めていたのだと言わざるを得ません。