ファンド出資と寄付を組み合わせた復興支援法

ビジネスモデル

東日本大震災からはや2年、3月11日である。「重い番組」ばかりであまりブログに書く気にならないのが多い中、「NIKKEI×BS LIVE 7PM」(BSジャパン)の「ファンド出資で応援する震災復興」はほっとさせてくれた。ゲストはミュージックセキュリティーズ代表取締役の小松真実氏。ホスト役は高樹千佳子キャスター、野田稔氏(明治大学大学院教授)。解説役は鈴木亮氏(日本経済新聞)という組み合わせだった。

ミュージックセキュリティーズはその名の如く、元々は音楽CD発行のための出資を募るための仕組みとして始まった。それがあるとき造り酒屋の再建に使われ、その評判を知った宮城県のお役人、「山田さん」(誰だろう?)の橋渡しで、震災直後に被災地の中小企業への応援のため「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げたという。  http://oen.securite.jp/

セキュリテ被災地応援ファンドのHPで見ると、ファンド実績として、募集総額1,126,040,000円、調達金額894,940,000円、参加人数24,835人と立派な数字が並んでいる。必要残額は231,100,000円と少なくないが、「まだ1/3」というより、順調に調達が進むことに勇気づけられ、それまで躊躇していた中小企業や商店が思い切って応募し始めているため、母数がどんどん大きくなっているのが実態らしい。

このファンドの特徴は出資と寄付を組み合わせたところにある。1口10,500円のうち500円が手数料。残り10,000円は対象ビジネスの資金として提供されるのだが、半分の5,000円が出資としてカウントされ、あと半分は寄付扱いされる。つまり半分は初めから「戻ってこないつもり」のカネなのだ。多分、世界の小口ファンドでも初めての方式ではないか。それだけファンド出資者は被災地の対象ビジネスに対し「応援」する気持ちが強いのである。もちろん、被災地の事業者は立ち直ろうとやる気と責任を感じており、「半分」の出資に対しては石にかじりついても「配当」(お金ではなく定期的な商品の配送という形も多そうだが)できるようになろうと頑張るだろう。

しかもこうした経緯で応援しているファンド出資者は、通常の寄付者と違ってその事業に強く興味を持ち続け、利害関係者として再興を願って自分でも商品を買おうとするし、友人・知人にお薦めするだろう。自分のブログで宣伝することだってやるかも知れない。それは出資に対するリターンを期待するというより、ファンとかサポータの行動である。小松氏はいい仕組みを考えたものだ。

小松氏とホスト役のうしろのビデオに映っていた被災地企業(斉吉商店だったかな?)の女性専務が、電話で感謝の意を述べるトーンが元気一杯で、「(出資者は)親戚が増えたようなもの(で心強い)」「次は被災地応援ファンドでなく(つまり半分寄付ではなく)普通のファンドでやりたい」と非常に前向きなコメントをくれたのが、とてもよかった。

お金のあまりない人でも、必要な商品を買う際に被災地発の商品を買う。少しお金のある人はこうした小口ファンドに出資する。一杯お金と暇のある人は寄付すると同時にボランティアか旅行で現地に行く。大きな会社のオーナーや経営者なら被災地に仕事をもたらす。誰もが自分のできることをすればよいのだと改めて思う。