トランプ関税の本質は一般庶民税と富裕層優遇

ブログ社会制度、インフラ、社会ライフグローバル

世界中がトランプ米大統領に振り回されていますが、その最たるものがトランプ関税です。

トランプ関税は産業&外交政策という顔をしています。米国の貿易赤字が増えてきたのは米国産品が海外からの輸入品に取って替わられたからだ、だから外国に奪われた雇用を国内に取り戻すんだ、とトランプは国内の支持者(主に製造業労働者)向けに言っています。

確かに政治的旗印はそうした「顔」をしているのですが、そう簡単に海外の生産者が米国内に生産地を切り替えることはできませんし、しようとしないでしょう。

今の米国では圧倒的に外国製品が主を占め、国内製品でもその原材料や部品は外国製がメインです。国内製品のほうが相対的に安くなって切り替えることができるのは1~3割でしょう。(国内製品も海外製の部品や原材料が値上がりするため)結局は依然よりずいぶんと値上がりした商品(外国産と国内産の両方とも)ばかりが店頭に並ぶのです。

トランプ関税をまともに実施したら、その関税を実際に誰が最終的に負担するのかというと、米国内の消費者です。しかも所得制限とか関係ないので、まさに一般税、一般庶民が圧倒的に負担することになります。ここまでいいでしょうか。

一方、トランプが関税に固執する理由は、大型のトランプ減税(元々1次政権時に執行した時限措置税の恒久化と、さらなる上乗せ減税措置の両建て)の財源にしようとしているからです。

他にめぼしい財源としては外国支援や弱者(生活困窮者、性的少数者など)支援プログラムへの補助金削減や国連拠出金の多くを取り止めたり政府機関を閉鎖したりしてきているのですが、歳出削減だけでは全然足らないのです。やはり大幅な歳入増が必要で、その当てとしてトランプは関税に目を付けたわけです。

ではそんな大型の減税の目的は何か。建前上は景気をよくすることですが、実は放っておいても米国経済の景気は絶好調にあった訳です(トランプ関税騒ぎで様子見気分が広がっているので、先行きはむしろ怪しいですが)。だからそれではありません。

減税の主たる方法は企業と個人の所得税の税率を下げることですから、実際にはトランプ自身をはじめとする企業経営者や富裕層が一番の便益者です。彼らは1%でも税率が下がれば膨大な減税に浴することができる訳です(富裕層だと100万ドル程度の減税なんて軽くありそうです)。つまりトランプ減税の目的は「企業経営者や富裕層を喜ばせること」なのです。

一方、トランプ支持者の大半を占める製造業の労働者はどうでしょう。元々大した所得税を払っている訳ではないので(精々年間1000ドル程度でしょうか)、「大型減税」と銘打たれても、彼らの利得分は雀の涙ほどです(精々年間200ドル程度かと)。

でもトランプ関税のせいで労働者が支払わないといけない生活コスト増分は多分、年間500~1000、つまり平均750ドル程度にはなるでしょう。つまり差し引き(750-200=)500ドル前後は損する構造です(それに対し富裕層だと例えば1,000,000-100,000=900,000ドルの得!)。

多分、トランプ支持者の製造業労働者でこのからくりに気づいている連中はほとんどいないでしょうが、同じ支持者の企業経営者や富裕層はとっくに気づいていて、「しめしめ」とほくそ笑んでいるのでしょう。