スパイ小説並みの現実が繰り広げられるサイバー戦争の舞台

社会制度、インフラ、社会ライフ

連休前後に録り溜めした番組録画の感想の続き。順番はデタラメだが、5月14日 (土)に放送された、最先端の科学テクノロジーに迫る番組「SFリアル」を観た。タイトルは「SFリアル「サイバー戦争の世紀」」。

番組の事前予告はこうだった。今回のテーマは「サイバー戦争」。インターネット空間で繰り広げられるサイバー攻撃。危険は私たちにも迫っている。特に問題なのがスマートフォンのハッキング被害だ。さらに国家規模のサイバー攻撃では情報の流出だけでなく、インフラを「物理的に破壊」するまでになっている、と。

番組はいきなり「ウォーゲーム」という映画のシーンから始まった。でも最初の脅かしは、身近なスマホアプリには危険性が潜んでいるという話から。スマホ紛失時に探すアプリをスマホにインストールしたら、どんな情報が盗み見られてしまうかという実験だった。通話履歴やmail(SMS)情報(内容や宛先)、現在地情報、そしてカメラを使った遠隔撮影…等々。

本来悪用するために作られたものではないアプリであっても、使い方によっては悪用されてしまうということだ。

続いて無線LANの危険性についての実験。無料Wi-Fiがあるカフェ内に、カフェのWi-Fiを騙ったWi-Fiを設置しそこにユーザーをアクセスさせ、ネットでどのようなやりとりをしているかを盗み見ることができるかというもの。最終的には、被害者(役)が自宅の鍵を管理しているホームオートメーション・システムの情報から、実際に被害者宅に行き鍵が開けられてしまう。

次に紹介されたのは自動車のシステムを乗っ取り、実際に運転中にシステムを乗っ取り、ブレーキまで掛けてしまうという実験。見事に成功。これは以前話題になったはず。

ここからは実際に起こったサイバー攻撃(戦争)や実験について続く。2007年に行った「オーロラ実験」。発電機を乗っ取り、負荷をかけ物理的に破壊することができた。ウクライナの発電所で昨年末サイバー攻撃があり、停電やファイル削除が行われ、これらはブラックエナジーというマルウェアが使われていた。2010年にはイランのウラン濃縮施設がサイバー攻撃され(最初のサイバー戦争とされる)、「スタックスネット」というマルウェアが使用された。

この辺りの話はサイエンスZEROでもやっていたようだ。だからNHKでも詳しく知っていたため、何度も使いたがったのだろう。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp532.html

しかし、なぜイランの核開発阻止向けに開発されたはずの、とんでもない投資金額に上る(つまり国家プロジェクトと目される)技術がその後、サイバー犯罪に流用されるに至ったのか、肝心な部分に全く突っ込みがされていないので、非常にフラストレーションがたまる内容だった。

仮説として申し上げれば、米国の国家プロジェクトに関わった誰か(会社かもしれない)がその最先端技術を勝手に流用して、もしくは第三者がその重要技術を盗んで(ほとんどMission Impossibleの世界だ)、私的犯罪に応用したということだ。きっと今頃はCIAとMI6とやらが犯人探しに奔走しているのだろう。