ステータスの異なる3つの事業

ビジネスモデル

この夏はたまたまだが、3つの全くステータスの異なる事業の戦略を策定する仕事に平行して携わってきた。

一つめは既存事業の見直し。本来の競争力からすればもっと高い収益を得てもおかしくないのにブレイクできない状況のままだった。シナジー効果の高い外部ビジネスとの提携関係を新たに模索し、さらに収益モデルにも多少手を入れることにはなりそうだが、最も期待効果の高い改革としては顧客アプローチを変えるという相対的に地道な取り組みを進めることになった。

二つめは既に立ち上がった新規事業の戦略構築。方向性のコンセプトだけ掲げられて担当者たちが推進に取り組んでいたのだが、戦略の肉付けがなかったために具体的にどこをどう押せばいいのかはっきりせずに暗中模索していた状況だった。ビジョンとその実現シナリオおよび各段階における事業関係者の役割を特定し、当面誰にどういったことを働きかけるべきかを明確化し、まずは動き出せるようになった。

三つめは全く新しいサービスの立ち上げ検討。本当にニーズがあるのか、そのために誰がどれだけ払ってくれるのか、などを明確にしながら、新たなビジネスモデルを構築するプロジェクトだ。ユーザーの価値の置き方や規制面などの制約が明確になるとビジネス実現のスキームが変わり、それによってビジネスモデルの諸要素の設計が変わる、すると事業収益性が変わるといった具合に、連立×次方程式を解くような作業を繰り返してきた。こちらはあとしばらく、もがき続ける必要がありそうだ。

結論からすると、一つめより二つめ、二つめより三つめ、という順で困難度が格段に上がる。プロジェクトメンバーとして携わっている事業担当者が顧客や市場から吸収してきた情報の蓄積が全く違うため、1次仮説の精度が相当異なることと、検証方法の困難さとスピードにも格段の差があるためだ。

それにしても、位置づけも分野も異なる事業の戦略策定を同時に進めるというのは、ちょうど別のスポーツに平行して取り組むようなものだと感じた。勝つためのポイントも強化すべき筋肉も異なる。しかし基礎体力の強化や戦略性がどのスポーツにも効果的なように、底流にある戦略的な発想の重要性や目のつけどころのパターンには意外と共通している部分があることも事実だ。

経営者の皆さんは日々、こうして鍛えられていくのだなと思った。