スコットランド戦の舞台裏が凄かった

ブロググローバル

年末の12月29日(日) に放映されたNHKスペシャル「死闘の果てに 日本vs.スコットランド」をご覧になったでしょうか。とても充実した内容でした。
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20191229_2

今回のW杯におけるラグビー日本代表の闘いは国内外で熱狂を巻き起こしました。中でも「歴史を変えた」とまで絶賛されたのがベスト8をかけたスコットランドとの決戦でした。

試合は前半、日本が連続トライで大きくリードしました。しかも後半開始直後、福岡選手のインターセプトからのトライで追加点を上げ、28対7とさらに決定的な差をつけました。素人である私なぞはこの段階で一安心し、「これでベスト8は間違いなし」とまで思いました。

しかしスコットランドの選手の考えは違っていました。実はハーフタイムでヘッドコーチからは「日本チームは後半確実にバテる。チャンスは必ず来る。見逃すな」と訓示されていたのです。

実はこの福岡選手のインターセプトの直前、スコットランドの攻撃陣側には3人、守備側の日本は1人しかいない状況が出ていたのです。前半で激しいチャージを繰り返した日本チームのフォワードは消耗し、隙間が度々出てきたためバックス陣がそれを補うため密集地帯に人を繰り出さざるを得なくなっていたのです。

たまたま足の速い福岡選手がインターセプトできたので日本の得点に結びつきましたが、スコットランドのパスが通っていれば逆にトライを奪われていた可能性が高かったのです。

そしてその状況はヘッドコーチの読み通り。スコットランドの選手たちに「これは逆転できる」と思わせ、彼らを奮い立たせるのに十分だったというのです。しかも彼らは伝統的に反逆精神に長け、「逆転のスコットランド」とまで呼ばれるチームです。

そこからのスコットランドチームの逆襲は凄まじいものがありました。あれよあれよとトライを繰り返され、1トライ1ゴールで追いつける7点差で残り25分を迎えます。そしてここから息詰まる攻防が繰り広げられました。攻めるスコットランド、守るニッポン。

サッカーなど多くの団体競技で、日本チームが途中まで有利に進めながら途中で形勢不利になってしまい、ずるずると逆転されてしまう場面を見ます。残念ながらわが日本民族は、特にチーム仲間を信じて、こうした局面で耐え忍びながらしぶとく勝ち切るというのが苦手なようです。でも今回の桜戦士たちは違いました。

彼らは、一旦は我を失いパニック状態にもなり、ジリ貧になりそうな情勢の中、危険なボールに飛び込んだ福岡選手の勇気ある行動に我を取り戻しました。「そうだ、自分たちを信じよう。やってきたことを信じよう。指一本でも止めてやる」と、一気に集中力が高まったそうです。確かにそこからは、一歩も引かないニッポンチームの気迫が画面からも伝わってきたのを覚えています。

そこからはまさに死闘でした。逆転を信じ怒涛のごとく押し寄せるスコットランドの攻撃を何度でも跳ね返すニッポン。その攻防の最中、両チームの選手たちは不思議な感覚に囚われていたそうです。絶対勝ちたいという執念は当たり前ですが、それと同時にラグビーが楽しくて、ずっとこのまま試合を続けたいと思ったと誰もがいうのです。「誇らしい試合だ」とも感じていたそうです。

そしてこの試合の終盤には観客までが両チームの選手を応援し、ひるまない選手たちを称えていました。テレビの前にいた私たち家族でさえ、球場の観客と一緒に「ニッポン、ニッポン」と声を上げていたくらいです。球場の観客の高揚感といったら多分異様なものだったと思います。

そして運命の25分が終わりました。見事な勝ち切り方で日本はベスト8に進出したのです。終わった直後のスコットランドの選手たちが日本の選手たちを称える様子がまた感動的でした。これが「ノーサイド」だと。

試合を観るだけでも妙に興奮し高揚感を覚えたのですが、ちょっと不思議な感覚も覚えました。それがこの舞台裏の両選手の心理の動きだったのですね。スポーツドキュメンタリー番組ならではの掘り下げでした。

この番組が再放送されるのか、されるとしたらいつなのかは現時点ではまったく分かりませんが、是非観るべきものです。