「AIに奪われる仕事」のリストには間違いが多い

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「AI技術が発展し、AIによって人間が行う業務がなくなる可能性がある」という意見を見聞きしたことがある人も少なくないでしょう。でもあれ、相当な「眉唾もの」です。

まず有名処として日本では野村総研がオックスフォード大学と2015年に実施した共同研究調査では、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能になる」との試算が出ています。

株式会社野村総合研究所「AIと共存する未来~AI時代の人材~」

こうした学者レポートの問題点は、「技術的にできる」ことと、「社会的に受容され、実装し得ること」の区別がついていないことです(他の類似の研究・調査レポートも同様)。

現実にはロボットは高価なので、とても社会的には代替できない職業までリストアップされているのに、「偉い先生方が言っていることだから」と盲信する連中が「えらいこっちゃ」とSNSで流布しちゃうのですね。

具体的には次の職業が「可能性大」としてリストアップされていましたが、こんなのAIとロボットの組み合わせでも(技術的には可能でも)高価過ぎて社会実装される訳がありません。

ビル・建物清掃員、配達員、食料品製造従事者、電気機械器具組立従事者、飲食物給仕・身の回り世話従事者、調理人、販売店員、等々。

確かに一部の建物では夜中の清掃のためのロボットが導入されますし、一部の物品の配達がロボットやドローンで行われ、一部の食品工場や電気機器製造工場ではロボットが製造工程に導入され(工程の一部だけです)、一部のレストランでは配膳ロボットや調理ロボットが導入され、介護の現場でも部分的にロボットが導入されていますし、さらに進むでしょう。

でも肝心なことは、「一部だけ」だということです。圧倒的多数の現場では人がやったほうが安上がりで融通が利くのです。ましてや販売店員だとAIロボットで代替できるケースはホントに限られます。

つまり未来永劫、これらの大半の職業は無くならないということです。こんな明白な事実を取り違えるのは経営センスが欠如しているからでしょうね。

もちろん、リストに挙げられた職業の中には本当に将来無くなってしまうだろうなというものも含まれます。

例えば会計事務員(会計士じゃありませんが、会計士のアシスタントも含まれます)、庶務・人事事務員およびその他の一般事務員(「事務員」というところがミソです)、といったところです。これらは本当に大量に淘汰されるでしょう。

なぜなら会計士や人事部員などの正社員もしくはマネジャーがAIアシスタントを使って(それまで事務員にやってもらっていた)事務作業をあっという間にこなしてしまうことが可能になるからです。

コピーを取ったりファイリングをするのも、文書が電子化された今、事務員が頼まれるよりファイルを作成した本人がメールやチャット上で配ったり、フォルダに入れるのが当たり前です。だから既に純粋な「事務員」の仕事は激減しています。

要は、「AIに奪われる仕事」のリストの半分程度は嘘っぱちですが、半分程度は大体合っているといったところでしょうか。つまり「話半分」です。あまり信憑性が高いとは言えませんね。