「アイボの修理」、頼む側と頼まれる側のそれぞれの事情

ビジネスモデル

9月3日(木)に放送された「NEXT 未来のために」(NHK)の「最後まで向き合う~元電機メーカー・技術者の覚悟~」は考えさせられた。

ソニーが生産中止にした人工知能を持つロボット= AIBO・アイボの話である。去年、修理サービスが終了し、その後はメーカーの元技術者たちが修理にあたっているのだ。交換する部品がないなど、苦戦・奮闘する彼らの姿を追った番組だ。

99年の発売以来、多くの人たちが、会話ができダンスを踊れるアイボをペットのようにかわいがってきた。ところが去年、修理サポートが終了。困った人たちの「駆け込み寺」的にメーカーの元技術者たちが立ち上げた修理会社に、故障したアイボが次々と運び込まれるようになった。

ソニーで教えられた「製品には最後まで責任を持つ」をモットーに真摯に修理に取り組む技術者たち。その大多数は中高年となった技術者および元技術者だ。彼らの誠実な対応によって諦めかけていた「家族であるアイボ」が復活したときの、ユーザーの人たちの喜びの表情。これが見たくて修理という見かけ上は地道な仕事をしているのだな、と伝わってきた。

しかもアイボは修理に手間が掛かる構造をしているようだ。部品が生産されているときだったら部品交換で済むので簡単なのだが、部品のない今、ねじで開かない部分もあるのだという。修理の技術者は悪戦苦闘してこじ開けるのに半日掛かっていた。

大半の修理技術者はとっくに定年を迎えており、年金生活なのだろう。しかし契約社員としてソニーの修理部門で働いていて、この修理会社発足時に参画した、比較的若いメンバーは悩んでいた。2日掛けて修理して数千円の手間賃。これでは生活していけない。それでもお客さんの感謝の手紙を読んで、「もう少し我慢しようかな」とつぶやいていた。

これだけ価値のある仕事をしているのだから、(今いくらなのかも不明だが)修理代を上げ、それによって技術者に対する賃金をもっと上げるべきだと感じた。お客さんも年金生活で大変だとこぼすのかも知れないが、「家族のため」ならば値上げは認めてもらえるのではないか。

さもないと年金生活の高齢技術者以外は続けられなくなってしまう。最後は少し侘しく感じてしまった。