秋田の自殺者数を半減させた“命の駆け込み寺”

社会制度、インフラ、社会ライフ

経営コンサルタントという職業柄、様々な仕事をしている人の話を聞く機会がある。経営者の話もしかり。そして経営者の場合、往々にして過去に「どん詰まり」の経験を一度や二度はしているものだ。

そこで幸いにして回復し立ち直れた人もいれば、残念ながら倒産してしまった人も少なくない。しかし問題は、倒産したことで人生の甲斐を失ったり、家族が借金を背負ってしまうことを恐れるあまりに思い詰めたりして、自殺に追い込まれる人が少なくないことだ。

そうした経営に失敗した人に加え、親兄弟・配偶者の借金を背負ってしまった人が絶望にとらわれたり、いじめや過労などで精神が一時的におかしくなってしまったりして、やはり自殺してしまう人の報道があると、非常に悲しいものだ。「生きていれば何とか盛り返せることもあるのに」とつい思ってしまうが、当人にとっては、冷静に事態を分析し対策を練るなどといったふうに考える精神状態でないのだ。

8月1日に再放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の録画を仕事の合間に観たのだが、「あぁこうして自殺者を救ってくれている人がいるんだ」と感じ入った。2016年5月9日放送の「どんな絶望にも、光はある 自殺対策NPO代表・佐藤久男」という回だ。
http://www.nhk.or.jp/professional/2016/0509/index.html

「蜘蛛の糸」というNPO法人の代表である佐藤氏は「“鏡”に徹する」、つまりあえてアドバイスはせずに、苦しみを一つ一つ吐き出させていく手法を採っている。心理カウンセラーと同じだ。平均2時間の面談を終えると、気持ちを語りきった相談者の多くは自ずと気持ちが静まるという。そしてそこから当人も佐藤氏も解決策が見えてくるようだ。

佐藤氏も16年前、会社倒産、自己破産に直面している。従業員や家族への罪悪感で、自殺を考えるほど追い詰められたという。そうした経験を持つ人だからこそ、自殺ばかり考えるように追い詰められた人を救えるのだと思う。

残念ながらこうした「自殺者を救うための電話ボランティア」の数が減少傾向にあることも事実だが、小生の知人でも同様の経験を基に同じく自殺者を救う仕事をしている人がいる。本当に尊敬に値し、頭が下がる思いで一杯だ。