日産自動車の9月中間決算は悲惨な内容でした。営業利益は前期比90.2%減の329億円、純利益は同93.5%減の192億円でした。一歩間違うと赤字転落の瀬戸際です。
同社は大規模リストラに着手する方針を打ち出しています。グローバル人員数を9,000人削減、グローバル生産能力を20%削減して、年間350万台の生産でも耐えられる規模とするとのことです。
でもこの状況に直面して、果たして中堅・若手の有望株が日産の将来に希望を見出せるのでしょうか。これから次世代自動車や自動運転の開発競争に多大な人手とコストがかかる中、同社が厳しい局面を迎えることは間違いありません。
これは一時的な業績悪化ではなく、構造的な競争力低下が原因と言わざるを得ません。中国市場での不振(日系メーカー総崩れです)もさることながら、本来の稼ぎ頭だった米国で販売不振が続き、不人気車の在庫を掃くために多額の販売奨励金を出さざるを得ないため、利益が吹っ飛んでいる状態です。
売れ筋のHVもPHVもほとんどない上に、マツダやスバルのようなガソリン車の人気車もないのです。そりゃあ販売不振になりますよ。
実はこの状態、ちょうど同社がカルロス・ゴーン氏を招いて構造改革に取り組む前の1990年代と瓜二つです。
1998年当時、私はアーサー・D・リトル(ADL)という戦略コンサルティングファームに所属し、ADLジャパン社長のG・フクシマ氏と共に、当時の日産の塙社長に(色んな渡りをつけて)ようやく面談しました。しかし会うなり「ちょうどルノーと話がついて助っ人に目途がついた」と言われました(要は営業に行ったそばから断られたのです)。
その後、確かに「コスト・カッター」のゴーン氏は思い切ったコスト削減策により一時的に日産は復活しました。でもその内容は後ろ向きなリストラ策ばかりで、「魅力的なクルマ作り」の面ではトヨタ・マツダ・スバルなどの相当な後塵を拝していたことは、業界に注目している人には明らかでした。
何よりよくなかったのは「魅力的なクルマ作り」のためにOEMとして絶対に必要なサプライヤとの協力関係が再建されないまま、コストカットと小型EV(ノートなど)だけで世界戦略を張っていたことです。地道な努力を怠っていたのです。
最近でも日産はサプライヤ(Tier-1, Tier-2)に対し理不尽な取引慣習を続けていたことで公正取引委員会から下請法に基づく勧告を受けていました。
トヨタだったら厳しいところはあるものの、コスト削減に関しては自分たちでも細かく調べて「こういう工夫はできるんじゃない?」と共に考えるスタンスで頑張るところです。でも日産の現場は「それ(コスト削減)は君たちが考えることだよね」というスタンスで通して、とにかくサプライヤに犠牲を強いていたのです。
実力があって重要なサプライヤが段々日産との協力密度を下げて(日産を見限って)、他のOEMや他業界に注力重点を置かざるを得ないようになっていったことが、日産が「魅力的なクルマ作り」において競合にビハインドし続けた真の原因だと、私は見ております。
こうした背景の下、再び迎えた今回の危機に対し日産首脳陣は、今度はどう対処するつもりでしょうか。
再びルノーや商社など他企業(または経産省?)からの助っ人に頼るのでしょうか。それとも苦しくとも地道に自らのあり方(経営の顔触れだけでなく現場のあり方まで)を変えて復活しようとするのでしょうか。答を出すべき時が迫っております。
さて、『For JAPAN -日本を経営せよ』の11月放送分(テーマ:日本のお金の大問題)に再び出演しています。
11月15日(金)もまた21:30-22:00から放送され、YouTubeで見逃し配信もされています。第31回の小テーマは 「給料が上がらない日本」です。
ABEMAチャンネル:https://abema.tv/video/title/221-273
Youtube見逃し配信:https://www.youtube.com/@forjapan_project