〝街の電気屋さん〟を味方につける量販店の戦略

ビジネスモデル

7月8日に放送された「ガイアの夜明け」は「〝逆転の発想〟で客を呼ぶ!」。生き残りを賭けて常識とは逆の発想で客を掴むための挑戦、実に意外な家電ビジネスモデルを知りました。

いわゆる〝街の電気屋さん〟は全国で減少しています。家電量販店に客を奪われ、後継者も見つかりにくいという廃れゆく業態として認知されています。しかし今、売り上げ回復を果たしている店が増えているといいます。ご存じでしたか?

そうした街の電気屋さんが組んでいるチェーンが、名古屋市に本拠を持つ、「コスモス・ベリーズ」。その加盟店の特徴は、商品在庫を敢えて極力持たないことです。

地域の人たちに来店してもらい(例えばパソコン教室や無料のコーヒーの提供など)、そのついでに家電の要望を聞きます。店には消耗品は在庫していますが、完成品の商品在庫はほとんどありません。客にはカタログを見せて相談を受けています。気に入った商品があればその場で注文してもらいます。

客はなぜ全国組織のコスモス・ベリーズの加盟店とはいえ〝街の電気屋さん〟で買うのか。値段がヤマダ電機で買うのとほとんど同じだからです(確かにそれならアフターサービスのいい近所の電気屋さんで買いますね)。その値段がなぜ可能なのか不思議だと思ったのですが、まず驚くのは注文を受けた電気屋さんの行動です。隣町にあるヤマダ電機の量販店に買いに行くのです。!? !? !?

確かにヤマダ電機での店頭価格は安いでしょうが、そこで買ってお客さんに売るのでは店の利益はありません(電気屋さんで売る価格≒ヤマダ電機での店頭価格)。というか、時には赤字になるはずですし、人件費を考えたら絶対ペイしませんよね。

ここがコスモス・ベリーズの仕組みのポイントなのです。電気屋さんは客の欲しい商品を、本来はライバルである家電量販店から仕入れ、販売する仕組みなのです。つまり電気屋さんはヤマダ電機の店頭で買いながら、ヤマダ電機の仕入れ価格に少し(ヤマダ電機の最低利益分)だけ上乗せされた非常に安い特別値で仕入れることになっているのです。それをお客さんに売ることで店の利益は確保できます。もちろん、ヤマダ電機自身も少しだけ利益・売上が伸びます。

実はコスモス・ベリーズはヤマダ電機の100%子会社。いわば、ヤマダ電機の売り上げをあと少し伸ばすための、別チャネル開拓のための戦略子会社なのですね。こうした〝街の電気屋さん〟チャネルでの売上分だけ仕入れが増えるので、さらにヤマダ電機のバイイングパワーが高まるという構造にもなっているわけです。この面白い仕組みを考えた人、いい発想力ですね。

今では家電とは関係ない異業種(ガス販売店、美容店など)にも加盟店の開拓先を広げており、その数全国で8000を超えて増え続けているそうです。競合も赤の他人も仲間に組み入れる、さすがアグレッシブなヤマダ電機。そのパワーの一端を観たような気になりました。