M&Aにおける勘違いの素

グローバル

弊社では新規事業や海外進出サポートの関連でクライアント企業のM&A戦略策定をお手伝いすることが時折あります(たまたまですが現在も複数件抱えています)。

ある親しい経営者にそんな話をしたところ、「日沖さん、海外でいい会社が売り物に出ていたら教えてよ。ウチも考えなきゃ」と言われました。これって2重に見当違いの話です。

一つには、証券会社のようにM&A対象の会社を紹介して手数料を得るビジネスは、基本的には弊社のサービスメニューにはありません。でもこの間違いは些細なことで、本質的ではありません。

本質的に間違っているのは、物事の順番、プロセスです。M&Aというのは「売り物の会社が出てきたから考える」ものではありません。そんなプロセスでM&Aを実行すると(実際にそうしている企業が少なくないのは知っていますが)、ボロ会社を高値で買わされて、あとでほぞをかむことになりやすいものです。

あるべきM&Aのプロセスは、自社の(海外進出・展開の)戦略を描き、そこで自力で足りないピースを埋めるのに(そして「時間を買う」ために)どんなリソースや能力等を持った現地企業が必要なのかを考え、そのプロファイルに合った会社を選び出していくというものです。

そのため、通常は数十社程度のロングリストを策定し、段々絞って一桁程度のショートリストにしてから個別に打診する、という流れになります。最初から個別企業が1社だけ対象として登場するということは、本来はありえません。

ちなみにM&A成功例を重ねている日本電産の永守会長のところにはよく、「売り物」の案件が寄せられるそうです。そのほとんどは歯牙にも掛けられないそうですが、たまに即座に交渉プロセスに入ることもあるそうです。でもそれは、予め永守会長(と同社の幹部)が自社の戦略にマッチする「買い物リスト」を持っており、そこに含まれる会社がたまたま「売り物」として出てきたためなのです。決して、薦められたから買うといった馬鹿げた話ではないということです。