IoTとGEに日本企業はどう立ち向かうのか

ビジネスモデル

6月4日(木)にNHK総合で放送された「NEXT 未来のために」は「アメリカ発 新産業革命の衝撃 岐路に立つ日本の製造業」。小生の追いかけているテーマでもあり、非常に興味深く観ました。

あらゆるモノからデータを集め、効率化やコスト削減を目指す、製造業の新たな革命「IoT」で先行するアメリカの巨大メーカーGEの動きに日本はどう向き合うのか、密着取材したものです。

GEが進めるソフトウェア(というよりIoT Platformサービス)「Predix」を用いた新産業革命に日本の製造業が持つスキルは最高の資産になるとGEソフトウェアのビル・ルー副社長は語っていました。

まずは日本企業ユーザーを開拓し、その実際のデータを取得することが一つです。千葉県成田市にある日本貨物航空は、費用の40%を占める燃料費に頭を悩ませていましたが、自分たちの企業規模では専門のアナリストをおいて分析する余裕や1社だけで解析ソフトを開発するわけにもいかないと手をこまねいていました。

そこへアプローチしてきたのがGEでした。「Predix」を売り込みにやってきたのです。実際にGEには台湾の航空会社・エバー航空での実績がありました。実際のデータを基にGEが分析した結果、飛行経路を変更することで収益の改善につながったのです。日本貨物航空は、GEのソフトウェアの活用を前向きに検討することを決めました。

一方、技術を持つ日本企業が、GEの傘下に入ったり、提携関係を模索したりとその対応が迫られています。GEが日本の中小企業の優れた技術を発掘し、活用しようと動き出しているのです。幾つかの実例が紹介されていました。

一つ目は石油プラントなどで使う特注のバルブなどを作っている、新潟県刈羽村にある操業62年の金属加工会社。比較的最近、GEの傘下に入り、トップにはGEの社員が派遣されています。どうやら、GEの狙っている新産業革命でポイントとなるadditive manufacturingの実践の場として選ばれたようです。

しかし同社は今、金属用3Dプリンターを使うにあたり問題を抱えていました。仕上げの熱処理で変形するため、設計図通りのものができないというものでした。そこで設計者は熟練の技術者に相談を持ちかけました。熟練者の勘を頼りに、熱処理でどれほど縮むのかを考慮して設計図を見直すことにしたのです。GEが期待する熟練技術の技です。こういうのを褒めながらも飼い殺ししてきた日本企業が多い中、GEは本気で活用するつもりです。

2つ目は、京都市内にある近畿レントゲン工業社。歯科用のレントゲン装置を主力製品とする社員30人の会社です。レントゲン装置の肝となるX線の発生装置の小型化技術を得意としています。高い成長が期待できない国内市場で価格競争にさらされ、悩んでいました。

そんな時、GEが企業の高い技術をホームページ公募していることを知り、販路拡大を期待して応募したのです。GEの社内で技術を使いたいという声が出たので、GEの社員が会社を訪れました。GE側は「技術を盗むのではなく利用したいだけなので心配しないでほしい」といいますが、企業側としては不安をぬぐえないようでした。

最終的に技術を提供するときにどこまで開示してどこを守るのかをきちんと社内で決めておく必要があると担当者は語っていました。この心配は外資系だからしてしまうのでしょうが、GEのように倫理性の高いグローバル企業なら大丈夫です。中国や韓国の企業だと倫理性がないので絶対ダメですし、たとえ日本企業でも倫理性がないところはダメです。

さて、日本はこれからも世界の製造業をリードしていけるのか、このIoTの流れについていけなくなればその立場も危うくなります。番組の最後に日立の人が登場して、「GEの動きは全く怖くない」と言い切っていました。日本が得意とする製品の品質や信頼性をベースに、(GEのように手広くではなく)自分たちが得意で強い事業領域で勝負をするというのです。正しい考え方です。実際問題として、いくら日立でも得意な社会インフラ系以外はGE・シーメンス等に対抗するのはしんどいでしょうから。