酒類の巨人、サントリーは水の有難味と人間の不屈さを知る

4月24日に放送のカンブリア宮殿、今回は絶好調のサントリーを採り上げ、“ヒット連発、巨額買収!「やってみなはれ経営」で世界大攻略“というタイトル。スタジオにはサントリー酒類の社長でサントリーHD副社長の相場康則(あいば やすのり)氏が登場しました。

グループ売上2兆円にのぼる酒類・飲料の巨人、サントリー。その快進撃が注目されています。 高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」は業界地図を塗り替えました。このヒットで、1963年に参入してから2008年まで45年間も赤字を続けたビール事業は悲願の黒字化を果たし、業界3位に躍り出ました。その後もビール市場の縮小にもかかわらず売上は年々増加、シェア拡大を続けています。

市場が25年で最盛期の5分の1に縮小したウイスキー事業も、「ハイボール」ブームを仕掛けて復活しています。都内の居酒屋で若い女性たちが次々とボトルキープするという〝現象〟をつくり出したのは、新商品「ふんわり鏡月」。焼酎に甘い味を付け、アルコール度数を下げて飲みやすくした新ジャンルの商品で、若者や女性に「新たな酒の飲み方」を根付かせつつあるそうです。正直、知りませんでした。清涼飲料でも「伊右衛門」「オランジーナ」(これ、随分ヒットしているのですね)など立て続けにヒットを放っています。大企業ながら本当に元気のある会社ですね。

そんなサントリーの強さの裏にあるのは、創業者・鳥井信治郎から受け継がれた「やってみなはれ」という言葉に象徴されるチャレンジ精神というのは有名な話。115年の歴史を持つ巨大企業でありながら、常に挑戦者として市場を切り開き続けるサントリー。戦前には日本初の本格ウイスキーを発売するなど、洋酒文化を浸透させつつ日本の高度成長に合わせるように発展してきました。しかし1980年代、稼ぎ頭のウイスキーが急に売れなくなるという危機が訪れました。しかもその20年前に参入したビールはまだ大赤字です。会社が追い込まれた状況で、サントリーがとった多角化戦略が現在の快進撃につながっているのです。

その際には①「若者もやってみなはれ」=若手に挑戦させ任せることと、②「常識破りの商品開発」(例えば「甘味チューハイ -196℃」や青いバラなど)がものを言ったようです。要は会社ぐるみで「挑戦すること」を社是としたのです。この象徴がビール事業でしょう。

二男で2代目社長・佐治敬三が願い出た「ビールをやりたい」に対し、創業者・鳥井信治郎が言った「やってみなはれ」。その一言から始まったビール事業は、1963年の参入から実に45年もの間、赤字が続きました。この間、営業マンは酒屋で相手にされず、地域の祭りやバーの仕事を手伝い、それでもビールの開発者たちは「うまいビール」をつくるため技を磨き続けたのです。実際小生もモルツが出た辺りから何となく応援したくてサントリーを時折飲むようになりました。本当はうまいビールなのに、売れ残るために新鮮さがなくなって、お客が試しに飲んだ時にはまずくなってしまうという話を相場氏がしていましたが、確かにそういうことで「サントリーのビールはまずい」と信じ込んでいる人が多かったと記憶しています。

事業の転機となったのは2005年に発売された「ザ・プレミアム・モルツ」のヒット(その要因はモンド金賞の3年連続受賞)。これを生むための生産上の工夫(例えば途中で一部を移し替えて沸騰させてうまみとコクを増す)も紹介されていました。確かに美味しそうです。しかしその種をまき、育てたのは「絶対にビールをあきらめない」という歴代オーナー社長たちの強い姿勢、そして、ある「常識破り」の投資だったと言えるでしょう。

今年1月、米ウイスキー大手ビーム社を総額160億ドルで買収すると発表、キリンとの経営統合策が挫折した後に一旦は棚上げになった、世界に本格的に打って出る体制を整えつつあります。そしてここ数年、サントリーのウイスキーが本場イギリスの品評会で賞を総なめにしています。世界の評価を集めるその味は、個性的な原酒を生み出す“蒸留釜”や、原酒に多様な味や香りをつける日本独自の“樽”の自社生産等々から生み出されます。

90年間のウイスキー作りによって蓄積された、日本ならではの技術、そして水源を守るための社員総出の活動などが次々と紹介されていて、あぁ、サントリーの工場見学をして、あの原酒を飲んでみたいと思いました。併せて、こうしたユニークそのものの企業文化を次世代に残すためには、キリンとの経営統合話がお釈迦になって却ってよかったんじゃないかと、外野の気楽さで言わせてもらいます。