米空軍による日本の都市への無差別爆撃の真相

組織防衛のための立場上の決定が倫理上やってはいけない一線を越えてしまう、そしてそれを恥とも思わない。こうしたことは企業経営でも往々にして起き、それが世間にバレると当該企業の存在を社会が許さなくなる。

しかしそれが戦争遂行のために国家ぐるみで行われ、しかもその国家が戦勝してしまうと、そうした非人道的な行為は誤魔化され、装飾され、むしろ称賛されてしまう。それが米軍による原爆投下であり、東京をはじめとする大都市への無差別爆撃だ。

それをまざまざと浮彫りにし詳細に語ったのがNHKの「BS1スペシャル「なぜ日本は焼き尽くされたのか~米空軍幹部が語った“真相”」だった(この8月に録画していたのをようやく数日に分けて観ることができた)。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2409266/index.html

この番組では、アメリカ軍に視点を置いて、なぜ日本を壊滅的に攻撃するようになったのかが詳細に描かれている。

この番組のお陰で初めて知ったことが幾つかある。

今までよく東京大空襲の責任者として名前が挙がっていたカーチス・ルメイ将軍(ベトナム戦争での同様な無差別爆撃“北爆”の責任者でもある)は実は単なる作戦実行責任者に過ぎず、本当に「B29から焼夷弾を落とし日本の大都市を焼き尽くせ」と直接的に焼夷弾に言及して指揮したのは彼の上司、当時のヘンリー・アーノルド将軍(のち元帥)だったこと。

第二次大戦終了までは空軍は独立組織ではなく、陸軍の下部組織だったということ。「空軍独立」の夢を実現するため「空軍力だけで戦争を終わらせることができる」ことを誇示したいだけのための作戦が本土空襲だったこと。なんとガス攻撃計画すら立てていたということ。

しかもそれまでドイツ(ロンドン大空襲)と日本(重慶大空襲)の市民虐殺行為を声高に非難していた米国政府と空軍は「自分たちなら(軍事施設だけを狙う)精密爆撃ができる」と宣言していたこと。しかしドイツでは対空砲と対抗戦闘機をかわしながらの精密爆撃に失敗したこと。日本ではそれらを避けるために高度1万メートルの上空からの中島飛行機工場への精密爆撃を試みたものの毎回失敗していたこと(主に上空のジェット気流のせい)。ときには残り少ない日本の戦闘機に攻撃されたり、エンジン設計のまずさから度々火災事故を起こしたりしていたこと。

それにしても終盤で放送されていた、陸軍の文民官の「悲惨な焼夷弾攻撃を止めさせるために原爆使用に賛成した」というのは矛盾した話と一瞬感じた。しかしよく聞いてみると、「焼夷弾攻撃を加えたパイロット達が、焼けた肉体のにおいが機体や自らの体に染みつくのを嫌がって、洗うのが大変だった」という話なのだ。そこにはまったく「市民の無差別殺戮は戦争犯罪だ」という罪の意識はない。所詮アジア人を人間視していなかったのではないか。

パールハーバーはあくまで軍事施設への攻撃であり、恥じる必要はないが、都市への焼夷弾による無差別爆撃は完全に市民の皆殺しを主目的に行い、市民の戦争継続意欲を奪うための作戦だと明示されており(空軍創設者のウィリアム・ミッチェル陸軍少将のレポートなど)、弁解の余地はない。戦争というのはもともと狂気の沙汰ではあるが、やってはいけないことを何度も繰り返したのは米軍なのである。