「インフレ率が年平均で2%を突破するまで『ゼロ金利政策』を続ける」という黒田春彦・日銀総裁。その金融政策への「突っ込み」の最終第五弾として、『ゼロ金利政策』をどうやって止めるのかという観点について考えてみよう。

 
 
前回の記事「(4)ゼロ金利政策を続けていて本当にいいのか」では、『ゼロ金利政策』を続けることのメリットとデメリットを整理した上で、国民の多くにとってはデメリットのほうが大きくなっており、日銀の政策転換も遠くないのではないかと結論付けた。

 
次世代にツケを回すことを止めて財政規律を取り戻し、次の経済ショックに備えるためには、早々に『ゼロ金利政策』の旗を降ろして普通の低金利政策(ターゲットとしては普通預金金利で2%台半ば辺りか)に切り替えるべきだと筆者は考える。

 
そのためには、ゼロ金利政策を止めることに伴うリスクを考慮しておく必要がある。

 
前々回の記事でもお伝えしたが、政府が一番恐れているのが、反動で今度は金利が暴騰して国家財政に占める借金返済分、すなわち国債発行額が加速度的に増えるのではないかという懸念である。かえって財政再建が遠のく「恐怖のシナリオ」だ。

 
このリスクに対する予防策をきちんと打っておかないと、政策転換に強硬に抵抗する人たちを納得させることはできないだろう。

 
ゼロ金利を止めると同時に金利高騰に見舞われるリスクというのは、政府が財政規律を保つ意思がないと市場関係者がみなし、国債の買い手が極端に減ることで現実化する。

 
実は従来の主要な買い手であった生保などの金融関係者は少しずつ国債の購入を手控え始めており、既に日銀が主要な買い手になっている(発行残高ベースでシェア4割を大きく超えなお増加中。これは既に異常事態と言えるかも知れない)。したがってゼロ金利を止めたことで金利高騰が現実化した場合、一時的には再び日銀が国債を買い支えるしかないだろう。

 
それは金利正常化という出口戦略の仕切り直しを意味するばかりか、財政の再悪化と、日銀券(=紙幣)の信用低下すなわちインフレーションを招く八方ふさがりへの入り口がぽっかり空くことを意味する。

 
そうした金利高騰を避けるために必要なものは何か。それは政府、つまり与党と行政が一致して、財政規律を保つ強い国家意思を見せることである。

 
具体的には膨張した社会保障費と医療費、不要不急の公共インフラ投資やトランプ政権に言いなりの防衛費などの政府予算を(実質的に財政破綻した国に相応しく)思い切って抑制することに加え、実際に国家財産を大胆に切り売りして政府の債務を大幅に減らすことだ。

 
なぜそこまで必要か?景気回復による増税だけではプライマリーバランスの回復すらままならないことはここ数年の予算実績でもう経験済だし、来年度の消費税増税でも追いつかないことは多数の専門家による財政シミュレーション*で既に明らかなのだから。

* もちろん、政府のご都合主義の超楽観シナリオに基づくそれは除外する

 
そしてこうした財政リストラ策と金利正常化は、何とか景気がよい状態を保ち、インバウンド特需が世界からもたらされ、しかも東京オリパラおよび大阪万博が決まっているという、ここ20~30年来で初めての絶好機を迎えている「今」しか実行タイミングはない。この機会を逃すと、次は全てが下降期にある状況で行う「苦し紛れの策」としか取られかねず、政策効果は半減どころか数分の一とかになるだろう。

 
そしてこの思い切った国家財政のリストラと金利正常化こそが、ニッポンの未来を破綻から救う最善の方策であり、勇気ある選択だといえる。それはすなわち、各方面に痛みを分担してもらう本当の政治家の出番だと言ってよかろう。選挙対策で気になる目先の国民生活だけでなく、将来の国民生活も共に守ろうとするのが本来の政府の役割なのだから。