日立の原発事業に見る優柔不断の罪

先日、日立製作所本体の業績見通し大幅下方修正が話題になりました。

ポイントは原発事業です。国内はもう新規が見込めないので、政府からも後押しされて海外市場での拡大を戦略として掲げていました。具体的には英国で獲得した増設案件が中核なのですが、福島の事故以来、世界的に(特に先進国では)対策費があれこれと追加され、当初計画からすると建設費用がとんでもなく跳ね上がってしまったのです。

英国政府および顧客である地元電力会社も相当な負担をするのですが、受注して建設を請け負う日立なども多大な追加負担を余儀なくされているのです。

そのため原発事業に関わる資産を既にほぼ全額棄損したものとして(つまり無価値な事業として)、思い切りディスカウント評価したことで、日立全体が損失を被った訳です。

これはちょうど東芝が破綻しかかった原因となった子会社・ウェスティングハウスのケースとそっくりです。はっきり言って原発事業に未来はありません(廃炉ビジネスは別ですよ)。これは小生が福島の原発事故以来、主張している通りです。

新興国と途上国の一部はまだ騙されて建設したがるかも知れませんが、真剣に検討したら対策費が割高過ぎてペイしない事業に既に変わってしまったのです。

ウェスティングハウスおよび東芝が大きな痛手を被った際に、なぜ日立はこの事業からの思い切った撤退という判断をできなかったのでしょう。

一つには、地元電力会社だけでなく英国政府もまた負担する姿勢を示していたことで、つい「自分たちには大した火の粉は降りかかってこないだろう」と高を括ってしまったのでしょう。

もう一つは、日本政府が「原発は日本のベース電源として今後も必要だ。だからその技術を絶やさないために海外輸出で稼いで維持して欲しい。政府もその売り込みに協力するから」という姿勢を維持したものだから、日立としては引くに引けない状況に追いやられてしまったのでしょう。

しかし東芝のケースで分かるように、日本政府が業績悪化ましてや資産喪失または債務超過状態になった企業を救ってくれる訳ではありません。ビジネスですから企業は自己責任で事業を進めるしかなく、その結果は自らに帰ってくるのです。政府に甘えても、かえって冷たくされるだけでしょう。

これ以上資産価値を棄損しないために日立にできることは、断腸の思いで原発事業をあきらめることではないでしょうか。