日本という国家の危ういポジション

少し前に本欄でお伝えしたように、直近のプロジェクトの一つで某社の全体に関わる経営環境分析を行っています。役員合宿のため、幾つもの未来予測情報(レポートや書籍を含む)を搔き集め、それらを分析して近未来における世界の経済・社会および日本の経済・社会に関する整合的な見方を得ようとしています。

正直かなりしんどい仕事で、休日まで大幅に食い込んでしまっています(この連休も休めるのは一日だけでした)。でもそれ以上に興味深い分析や示唆が生まれているので、それ自体は楽しいプロジェクトとなっています。しかし日本を取り巻く情勢を客観的に分析していると、あまり楽観的な予測が難しくなっているのも事実です。なかんずく日本の財政については甚だ悲惨な状況にあります。

元々バブル崩壊後の日本経済・社会は厳しい状況をずっと続けていました。その背景には合理的な意思決定が企業レベルはもちろん国家レベルでも行われず、問題の先送りが続き、正しい意味のリストラクチャリングやイノベーションへの真剣な取り組みがなされなかったことにあります。多くの企業で唯一なされたのが人件費の継続的な削減と価格のディスカウントでした。

その結果は当然ながら、付加価値がずっと低迷したままの状況です。そのため一部の製造業を除いて生産性が低迷し、その結果デフレが進行、消費が低迷(貯蓄が積み重なり)し、不足する総需要を全国各所での公共工事投資というカンフル剤で補ってきたのが実態でした。

それでは国家財政が持たないと、一旦は「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズで登場した民主党政権が、無茶苦茶な素人運営により迷走の挙句に内部瓦解し、結局自民政権が再登場し、アベノミクスの名の下に昔の政策(国家が巨額の借金をしながら公共投資でカンフル剤を打つ)に先祖返りしただけです。

唯一違ったのは、政策金利を思い切り下げたことで行き過ぎた円高を是正し、海外からの投資を呼び込んで株価を持ち直させたことぐらいです。しかも円安になったことで結果的にインバウンド需要を呼び込んでもいますので、景気は少し回復しています。いわば一息ついた状態です。

でも冷静になって考えれば、こんな国家財政運営は持続性がありません

何が悪いかというと、3点あります。第1点は、既に普通国債残高(国の公債残高)は1,000兆円を超えており、GDP比で2.2倍以上と世界最悪の状況であることです。つまり国全体で稼ぐ額の2倍以上の借金を国が背負っていることです。これは税収約14年分に相当し、このままでは将来世代に大きな負担を残すことになります。

第2点は、毎年の国家予算のうち国債発行(すなわち借金)が占める割合が一向に減らないことです。実質的な借り換えを繰り返している訳ですが、プライマリーバランスが取れることは殆ど夢想になっています。つまり壮大な自転車操業を続けているようなものです。

その差分の借金は国債という形を取っており、その大半は国民と日銀が保有しています(外国投資家は暴落が怖くて買いません)。国民が保有している分には資産なので、大した問題はありません。しかし日銀保有分については日銀の資産ではありますが、それだからこそ問題が生じます。

仮に金利が1%上がると国債の価格は暴落し、日銀はヘタをすると債務超過になってしまいます。そうなった時には日銀券に対する信頼もまた暴落し、とんでもないインフレが日本経済を襲うかも知れません。これが第3点です。藤巻元議員も国会質問で指摘していますね

そうなると為替面で円もまた暴落する可能性があり、輸入物価の急上昇を受けてインフレはなお加速します。そして金利が上がると国が返さなければならない実質的借金総額も大幅に上がります。つまり今は政策的に強引にマイナスに抑え込んでいる長期金利がまともなレベルまで上がると、日銀がまず困ったことになり、次に国民が困ったことになり、最後に政府も困ったことになる訳です。

こんな不安を抱えた国家運営というのは実に窮屈です。冒頭に挙げた経営環境分析においても、財政の制約により健康保険・介護保険・年金などの制度および公共インフラの維持は難しくなり、実質的な「変質」もしくは「手抜き」が行われるだろうと予測せざるを得ませんでした。政府は一刻も早く国家財政の立て直しの政治的意思を見せて欲しいものだと思います(消費増税ではなく、国家資産の売却と無駄な公共投資の取りやめが本筋)。