戦略再構築を求められる観光業

全国的に県外移動への制約はなくなりました。そしてほとんどの業種・業態の営業自粛が解除されました。飲食店の中でも接待を伴うクラブやスナック、さらにカラオケやライブハウスなども続々と営業再開が始まっています。プロ野球も無観客ながら公式戦が開幕され注目されています。

しかし同時に厳しい「感染防止策」を求められており、業種によってはなかなかシュールな光景も広がっています。

例えばクラブの中にはホステスさんが透明のフェースシールドをして接客している店が結構あるようです(マスクでは「女の子の顔が見えないのでは意味がない」と言われるためです)。飲食店では真正面に客が座らないように席を斜めずつにしてあり(仲間内で行っても斜め同士で座る)、会話をなるべく控えてと言われるそうです(仲間で居酒屋に飲みに行って会話しないのは無理でしょう)。

一時期、デリバリーこそが飲食店のサバイバルの道のように言われていましたが、それは店が目立つ位置にある場合だけです。隠れ家的な店だとデリバリーをやっていることすら知られないので、売上はほとんど期待できません。代わりに彼らの一部が期待しているのはキッチンカーです。以前だと改造費込みでクルマが(中古車でも)数百万円ほど必要だったのが、今やレンタルできますし、営業許可を取るのも場所を探すのも支援してくれるサービスが登場しています。

一方、県外移動も解禁され、観光業もようやく反撃のタイミングです。旅行代理店は魅力的な国内旅行キャンペーンを色々と打ち出していますし、ピーチ・アビエーションなどは随分割安な(新幹線などの鉄道よりずっと安い)運賃プランを発表しています。

地方自治体が旅行代金の一部に使える旅行クーポンを打ち出して個人客を誘うケースも目立つようになりましたし、国もGO TOキャンペーンを展開しようと準備を進めています(後者は事務局の丸投げ問題でケチがついていますが)。外出自粛に疲れた消費者は旅行に出かけたがっており、悪くないタイミングです。

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しかしそんな中でちょっと気になるのが、ホテルや旅館などの値下げの動きです。インバウンドが消滅して極端に稼働率が落ちている京都辺りが最も顕著なのですが、数割から半値ほども割り引くところが続出しているせいで、全体平均でも2割以上下落している地域が多くなっています。客が溢れかえっているときには随分強気の価格を打ち出していた業界なのですが、今や互いに首を絞め合っている状態です。観光業はちゃんとした戦略を考えないと困窮化している状況から抜け出せなくなります。

一消費者としては嬉しい反面、元々稼働率が落ちているところに価格を極端に下げると売上は全然上がらないのではと心配になってきます。営業すればするほど赤字が拡大しかねません。単純な値下げではなく、同じ価格で部屋や食事のグレードアップを図るとか、周辺の観光施設と提携して周遊券を作ってお得なパッケージにするなど、客単価を下げないよう工夫すべきです。

この感染リスクと付き合う期間は、国内でも少なくともあと半年、多分1年以上は続くでしょう。ましてや海外では今でも中南米や中東・アフリカなどの新興国・途上国で拡大の一途を辿っています。そうすると、来年のオリンピック開催自体が難しいし、開催しても期待できる海外旅行客数は大幅に小さいものになります。するとインバウンド需要が本格的に戻ってくるのは、早くて来年半ば、多分2年程度は掛かるでしょう。

それまで国内旅行客でいかに稼働率と利益を確保して経営をつなぐかが問われます。インバウンドのようにどんどん新しい客が沸いてくる時期はしばらく復活しません。比較的近隣県からのリピータ―客(自らの車でドライブしてくる人たちが中心)をいかに確保するかです。そのためには地域を周遊してもらい、来る度に新しい魅力を発見してもらうようにすべきです。観光業の人たちは今こそ地元の人たちとのつながりを強める必要があります。