大統領選にみる「引き際の美学」と「不思議の相場」

遂に米国大統領選の決着がつきましたね(まだ法廷闘争が続く可能性は残っていますが、各州の裁判所でトランプ派の根拠レスの訴えを真に受けて取り上げるところはそれほど多くないと思います)。バイデン氏のほうが「まし」なので、やっぱり米国と民主主義にとっては良かったと思います(米国の混乱を望むロシア政府は間違いなく残念がっているでしょうし、中国政府でも米国の着実な衰退を望む人たちは同様でしょうね)。

それにしてもトランプ陣営の往生際の悪さは特筆ものです。トランプに「敗北宣言」を出すよう説得する勇気ある側近はもう残っていないのですね。そもそも側近たちは「次の職探し」に熱心だとの情報が上がっていますので、トランプのことなどどうでもよいのでしょう。

あとは家族が「パパ、もう止めようよ」と泣きつくか(多分、これが一番有効)、次の選挙を狙っているペンス副大統領が、共和党の中および国民から「さすが次の大統領候補だ」と褒められることを期待して「猫の首に鈴を付ける」役割を果たすことに踏み切るかどうかです*

* 彼は今のトランプ支持者が次の選挙で自分の支持者になってくれることを期待しているので動けないのでしょう。
米国にも(「切腹」や「玉砕」という文化がある)日本と同じように、敗北した際の引き際が潔い(=a good loser)かどうかで尊敬の度合いが変わって、その後の立場が大いに変わる文化があります。

過去の例でいえば、ブッシュ(子)に僅差で敗れたアル・ゴアは環境保護推進派として、オバマに敗れたジョン・マケインは共和党の重鎮として、それぞれ見事な引き際と共にその後の名声に繋がっています。トランプはその反対方向に突っ走っています。(バイデンが大コケした場合には)4年後のリベンジも可能性としてあったのですが、こうした状況に陥れば国民の支持は得られないでしょう。

でもトランプは元々政治家としてのビジョンも自覚もない人なので**、そうした政治的な「次の手」には目が行かないのでしょう。彼にとっては今回負けた時の「損失」が大き過ぎるのだと思えます。もしかすると本当に「大統領でなくなると訴追されてしまう」と真剣に恐れているのかも知れませんね(まるで韓国のような…)。

**「ではなぜ大統領選に参加したのか」と問うでしょうが、いろんな証言から分かるように、前回の選挙は彼にとってはビジネス上の宣伝活動だったはずなのに、途中から勝ち目が出てきて根っからの負けず嫌いが首をもたげたのでしょう。一旦大統領になったら、再選できないのは恥ずかしいと考えるのは当然です。
それにしても驚きなのは、バイデン氏優勢&当確の報を受けて米国でも日本でも株が大幅に値上がりしたことです。実は前回の大統領選挙ではトランプ当選後に株がずっと上昇したので、今回もトランプ当選なら株が上がり、落選なら下がる、と予想されていたはずです。

でも選挙結果が曖昧な時点では「最悪の場合には支持者同士の衝突が起きるかも、負けたほうが暴動を引き起こすかも」などと市場が不安がっていたのが解消されたことと、トランプよりもバイデンのほうが政策方向性が読みやすい、といったことが市場関係者に好感されたのかも知れません。

しかし腑に落ちないのは、今の米国・欧州の経済が再びのコロナ感染拡大で悪化し始めている(米国は選挙のせいです)状況下、一方的な株高に向かっていることです。欧米各国政府がコロナで傷んだ経済を再生させるために、超低金利を続けているだけでなく市場への流動性供給を高いレベルで続けているため、カネ余り状態になっていることが効いているのは分かります。でも経済実態はまったく逆方向です(日本も同様です)。

こういう「実態乖離」の相場は、その先の反動が怖い一方で、意外と続くこともあるので、本当に読めません(私は相場師ではないので当たり前です)。混迷の大統領選がもたらした、ちょっとした心理ゲームになっていますね。