大局観と後講釈

先週の木曜、BPIA主催による第6回 The業務革新セミナーにて「ビジネスモデルを変える大胆な業務改革プロジェクト」を講演した。同じ日本に本社を置く精密機器メーカーだがサイズも背景も全く違う2つのSCM改革事例を詳しく説明したものである。

A社は中堅メーカー。故障・欠品・在庫過多といったSCMの問題オンパレードという事態。因果関係分析を切り口にバリューチェーンに沿っての全社的な「悪循環の構造」を明らかにした上で、一つひとつ優先課題に極めてオーソドックスな解決策を打っていったものである。

それに対しB社はグローバル会社。個々の日常的なSCMのレベルは高いのに、ほぼ全ての販売現法が独自に抱えた過剰在庫がモデルチェンジ期に棄却損となって全社利益を吹っ飛ばすという構造である。初期仮説に加え、別の製品設計改革プロジェクトとの協業によりブレークスルーが生まれ、抜本的な収益改善と顧客サービス向上が実現したものである。

お陰さまで参加者からは「非常に具体的な説明があったので、よく分かった」とか「背景も課題もピンときた」「なるほどという打ち手だと思った」などの好意的な反応をいただいた。

幾つかの質問もいただいたが、「なぜそんな事態になるに至ったのか」「元々KPIの責任者への持たせ方が悪かったのではないか」という微妙なものもあった。Yes & Noなのである。質問者は各事例メーカーが抱えていた問題の全体構造が小生の解説で分かっているからこそ、「そんなバカな状況になるなんて、経営者は何をしていたのか」とかいう反応を示すのだが、それは後講釈の理論なのである。

本来なら経営者は事業全体が見えているべきだろう。しかし小生の経験で言わせていただけば、最初から全体像が見えている人なんて実際にはまずいない。それに事業の戦略マップを明確に持っている人も極めて少数派である。この2つの事例でも、プロジェクトチームとしてヒアリングと調査・分析をやっているうちに全体の構造が見えてきたに過ぎない。それで初めて適切なる手の打ちどころが判断できるという段取りなのである。こんな話は、会社経営経験者じゃないとピンとこないかも知れないが…。

ちなみにこのセミナーはいやに当日欠席者が目立った。今回は事例を詳しく、しかも対比させたので、かなり手間を掛けて用意した。その分「役立つ」と参加者に言ってもらえたのは嬉しいが、欠席された方々にとっても有用なものだったと確信するだけに残念なことである。