ヤフーへの売却に見るZOZO創業者の思い

ヤフー・ジャパンがアパレルEC大手の「ZOZO TOWN」を運営するZOZOを買収(公開買い付け)すること、それに伴い名物経営者であった前澤友作氏が代表取締役を退任することが急遽発表されました。

 
共同記者会見では前澤氏自らがことの顛末を話し、ZOZOTOWNの経営をヤフーに任せることで再び成長軌道に乗せて欲しい、自らは月旅行に行くための訓練に忙しくなることやその先には再び起業に挑戦したい旨などを報道陣に語ったようです。

 
翌日のマスメディアの報道では、異端児・前澤氏の突然の行動に驚きと共に、概ね「仕方ない面もあった」という評価が連ねられていました。というのは最近のZOZOはZOZOスーツの失敗に加えプライベートブランド開始や割引サービスにより大手アパレルの離脱が相次ぎ、業績悪化と株価急落など経営ミスが目立っていたからです。

 
でも記者会見時に前澤氏が見せた涙の理由についてはあまり突っ込んだ分析がなされておらず、「常々『社員は家族』と公言していたほど愛着があったZOZOから離れるのがよほど悲しいのだろう」程度しか語られていません。

 
しかし私には違和感が残りました。以下は大いに個人的想像を盛り込んだ『多分、こうだったんじゃないか劇場』的な推測です。

 
前澤氏は実は保有するZOZOの株式を担保に多額の個人的借金を背負っていると言われています。業績悪化による株価急落に見舞われたことで、銀行から担保の大幅な追加拠出を求められたのではないかと推察されます。苦境に陥った前澤氏が尊敬するソフトバンクの孫会長に相談したのは当然で、ソフトバンク傘下に入ることですべてが丸く収まるシナリオが一旦出来上がったのではと思います。

 
多分、当初は、前澤氏は保有株式の一部だけヤフーに売却し、それで借金を返すつもりだったのではないでしょうか。そして創業者兼会長としてZOZOの経営者として残ることも、ほぼ合意直前までいった可能性が高いです。しかしここで引き受け側のヤフーの経営者・川邊健太郎社長らが「待った」を掛けたのではないでしょうか。

 
ご存じの通り、ヤフーは最近、子会社化していたアスクルの創業者と経営権を巡って揉めています。他にも世間には伊藤忠-アディダスなど、最近は親会社と子会社間に同様の紛争が止みません。「アスクル紛争」を繰り返したくない川邊氏らは、孫会長に対しZOZOの引き受け条件として「前澤氏は保有株式を全て売却し、経営陣からも退任し、ZOZOの経営から一切手を引くこと」を強く要求したのだと思います。

 
結局、前澤氏はこの条件を呑むしかなかったのでしょう。そしてこの経緯についても他言しないことを誓約させられていたと思います。だからこそ社員にも「本当は辞めたくなかった」とも伝えられず、記者会見では「悔しい」思いが溢れて絶句し、涙を見せたのではないかと感じられます。

 

いずれにせよ恨みがましい素振りを見せなかった前澤氏の潔さには感服した次第です。