プロらしからぬ仕事を生む土壌

比較的最近のプロジェクトからの感想や考察を述べたいと思います。実はこのブログで過去、そうしたコメントはあまりしていません。本当はもう少しブログ化しようと考えているのですが、冷静に描くため「ほとぼりを醒ます」期間を設けようとすると、忙しさにかまけてすっかり書くことを忘れてしまう、というパターンが典型的なのです。

ここで採り上げるプロジェクトは、何せテーマがTVCMゆえ珍しいので、印象が強いのです。というのは弊社のクライアント企業でもB2C向けTVCMを実施している企業は少数派です。しかもTVCMを実施する宣伝部門は我々のようなコンサルではなく広告代理店に頼みます(最近は、マス広告は費用対効果が悪いことが知られており、実務的な企業の宣伝費はネット広告にシフトしており、そうしたところでは弊社も策定した戦略実行の一貫としてお手伝いしています)。

今回の件は、クライアントは大手B2B系。でもその延長上でB2B2Cビジネスに以前から踏み込んでおり、その一つとして、従来ならリアルでしかありえない消費者向けの商売をネットでできるサービスを事業者に提供しています。そのサービスが順調に事業者に浸透・拡大してきたので、ここで(ここまでは事業者にある程度任せていた)消費者向けのサービスサイトへの集客をクライアント企業でも踏み込もうということになった訳です。

それで期間限定ながら一般消費者向けにサービスを知らしめるためのTVCMが有効なのではないかと、ある広告代理店出身の人から薦められて初めてTVCMを制作して宣伝することになりました。それで大手広告代理店に依頼して制作、放映してみたところ、クリエイティブ的には評判がよかったのですが、誘客実績としては「大コケ」でした。それで「大金を掛けながら何がどうまずかったのか」を検証・分析して次に活かしたい、というので弊社に声が掛かったという次第です。

細かな内容は割愛しますが、弊社が色々と調べると、クライアント企業は「自分たちは素人なので、大手広告代理店さんに全面的にお任せします」として適切な指示をせず、しかしかなり無茶な「希望的目標」ときついスケジュール&予算を提示したことが判明しました。

一方、そうした無茶振りをされた大手代理店は3つほど致命的な錯誤をしたようです。

1つ目としては、「(希望的)目標」を正式に修正することなく、なんとなく(要はきちんと議論せずに勝手に解釈して資料上にだけ明記して)言い含めた格好で、本来の目的である「誘客」を後回しにして「認知向上」を作戦上の目標に置き換えてしまったのです。これは広告代理店の習性でもあるのですが、クライアントに対し「あなた、間違っていますよ」とはっきり言えずに胡麻化してしまったのです。

2つ目としては、本来の目的からしたら不可欠な消費者像のプロファイリングもペルソナ作成もせず、彼らのカスタマージャーニーも想定せず、したがって導線設計もしないという、「ないないづくし」の「CM制作オンリー」路線に走ってしまったのです。これは予算が限られており、スケジュールがタイトなことで正当化されてしまったようです。

3つ目としては、消費者行動についての従来の思い込みに囚われて、自分たちが置いているはずの前提条件についてまったく認識がなかったことです。この広告代理店では過去の経験から「今の若い人たちは片っ端からスマホで調べる」という経験則を持っていました。でも今回よく分かったことですが、いくら若い人でも何のことやら大体理解でき、それが自分の興味ある分野の話でないと、いちいちスマホで検索しないのです(当然といえば当然です)。そのため広告代理店が頼りにする「AISASの法則」モデルが機能しなかったのです(そのため今後の方針に関しては弊社独自の消費者行動モデルに基づく方針と施策を提示し、実行してもらっています)。

2と3の問題は、広告制作されたクリエイティブ(CMそのもの)の出来がよかったために関係者が安心してしまい思考停止したため、却って増幅されたきらいはありました。それに先ほど指摘した、スケジュール&予算の無理は大きな制約ですので、一方的に広告代理店を責める気持ちには私はなれません。それはクライアントにも申し上げました。

とはいえ、はっきり言って「天下の〇〇」がこんなミスというかプロらしからぬ仕事をチームで行い、結果がコケルまで誰も「やばい」と思わなかったというのも不思議です。その部分に関しても分析はしましたが、端的に言って「日本の大手企業間における甘え」のようなものを感じざるを得ません。

プロとしての矜持があれば、2重3重の注意を払って「スピード」と「品質」を両立させるべく最善を尽くすはずです。でも最大手などという金看板に守られて結果をシビアに問われる環境でなくなると、いつしかサラリーマン的な視座に甘んじてしまう結果、人間は「まぁ、いいか」となってしまいがちだということが否応なしに感じられます。要は甘えです。

弊社のような「プロフェッショナリズム」を社是にしている者からすれば信じられない思いです。

PS 当該クライアントの「次の一手」は、弊社の推奨した「複数ネット広告を比較しながら組み合わせる」という作戦に決まりました(そのため件の大手広告代理店は多分、外されます)。弊社は元々クリエイティブ制作には関与しませんし、人的余裕もないので今回はディレクション業務もパスさせてもらいました。お盆に間に合わせるよう懸命に頑張っていただき、真夏の誘客結果をまたフィードバックしていただくのを楽しみにしています。