スパリゾートハワイアンズ~「一山一家」が支えた奇跡

7月11日(木)に放送された「カンブリア宮殿」は「“奇跡の集客”シリーズ第1弾!リピーター続々、年間140万人が殺到 “驚異のリゾート”福島ハワイアンズの底力」。「フラガール」も感動的だったが、この「震災後の奇跡」の物語はもっと感動的である。

東京駅バス乗り場に続々と集まる老若男女…バス4台は満車。ウキウキ顔のみんなの行き先は、福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」。東日本大震災から2年が経過した今も、原発処理、風評被害など様々な逆境に苦しむ福島県の太平洋沿岸部。それなのに年間140万人という驚異の集客力を誇る。

東京ドーム6個分の敷地に約20の温水プールや温泉、約500室のホテルを併設した巨大温泉リゾートである。なんとリピート率9割!驚異としか言いようがない。客のリラックスした表情がよく伝わってきた。独自の集客の秘密は、「3世代の客を取り込む様々な施設づくり」「1万2千円ポッキリで大満足の格安感」「東京など首都圏からの往復無料バス」「館内全て水着・裸足OK」…などなど。大したものである。

2006年公開の映画「フラガール」がヒットし、震災前は年間130万人が訪れたが、震災の影響で半年間休業し、来場者も30万人に激減。しかしそこから1年で震災前の水準に戻すという奇跡の復活を果たす。その間、辞めた従業員ゼロ(半年間の休業の間、給与をきちんと払っていたこの会社は凄い!)。フラガール達は復活を信じてずっと練習を続けていたという。その団結力を表す魔法のキーワードが「一山一家」。

実はハワイアンズの前身は、本州最大の炭鉱として戦後日本のエネルギーを支えた『常磐炭鉱』。その後エネルギーが石油に替わって閉山に追い込まれる中、当時の副社長だった中村豊(故人)が思いついたのが、沸き出す温泉を利用したリゾート「常磐ハワイアンセンター」だった。当時としては何と斬新な発想だったろうか。「父がホテルマン、母が厨房で皿洗い、息子がコックで娘がフラガール」。そんな家族総出で作り上げた地元愛そのものである施設。そんな彼らを支えたのが「一山一家:ひとつの山はひとつの家族」という、全国一過酷な環境だった炭鉱ならではの企業風土。オープン後も、石油危機やバブル崩壊、リーマンショックそして大震災…。幾多の苦難を乗り越えてきた「一山一家」のDNAが今回も復活を支えたのである。感動的だった。

場面切り替わって、平日のオープン前から続々と集まって来るのが、「毎日、風呂に入りくる」という地元客。ハワイアンズが地元の為に発行するのが年間パスポート。13ヶ月で2万円だが、毎日来る地元客にとっては1回たったの約50円。「家の風呂より安い!」と会員数は3,000人超。地元を周遊する無料バスまである。

「全ては地元のため」。これが常磐興産の会長、斎藤 一彦(さいとう・かずひこ)氏の信条である。震災後から現在に至るまで、フラガールを無償で全国へ送り、福島県やいわき市のPRを行っている。いわき市の「観光協会」の会長でもある。「観光は街づくり。地元の活性化がハワイアンズの為になる」と。地元愛の塊なんだろう、この人は。

今回は村上龍氏の編集後記もよかった。いわく「炭鉱の衰退、閉山、そして凄惨な労働争議を目撃した九州出身者にとって、映画『フラガール』は、奇跡の物語であり、また謎でもあった。日本でほとんど唯一、常磐炭鉱は労使協調のもと再生を果たしたのだが、なぜそんなことが可能だったのだろうか。斎藤氏のお話を伺って、やっと謎が解けた。温泉が噴き出すために採掘は常に危険が伴い、労働者同士はもちろん、経営側も、常に危機感を持ち、助け合ってきた。サバイバルにもっとも必要なのは、助け合うこと、協力し合うことだと、(ここの)人々は歴史的に学んできたのだ。訪れる客は、温泉で癒され、リラックスすると同時に、『助け合う』という肯定的な価値観に包まれるのだと思う」と。