オフィス労働生産性を向上させるために(6)『働き方改革』は狙いを見定めて

「オフィスにおける労働生産性を向上させるために必要なこと」シリーズの第6弾。
『働き方改革』には大きく分けて「効率向上」「ダイバーシティ推進」「創造性開発」の3つの異なる狙いがあり得る。自社の課題や取り組み成熟度によって、どの狙いが最も重要視されるべきかは異なってくる。

昨今注目される『働き方改革』は、大きくいうと「効率向上(による長時間労働の是正、およびワーク・ライフ・バランスの改善)」「ダイバーシティ推進」「創造性開発(またはイノベーション推進)」の3つに、狙いもしくは取り組みテーマが分かれる。

『働き方改革』の先進企業を標榜する会社での事例を見ると、「効率向上」はとっくの昔に一定水準を達成した上で継続的に取り組み、「ダイバーシティ推進」にもある程度の達成目途が立ち、今や「創造性開発」に本腰を入れようとしているようだ。

ところが、『働き方改革』に取り組んで日が浅い企業や方向感が定まらない企業だと、これらの狙いの間の相関関係や自社にとっての優先度を整理できておらず、やや混同気味なことも少なくないようだ。

それぞれの狙いをもう少し詳しく見てみよう。まず「効率向上」は一番分かりやすいだろう。「日本企業での働き方は世界的にみても労働生産性が低い」と云われるとき、大半の論者の頭の中には「生産性≒効率」の図式があり(厳密には違うことをこのシリーズの最初に申し上げているが)、業務効率を上げることこそ本丸だと主張することが多いようだ。

実際のところ、同じ業務アウトプットを出すのであれば少ないインプット、すなわち短い業務時間で済ませることで残業は減り(会社は嬉しい)、従業員は長時間労働から解放されて早く帰宅できる(本人は健康を維持でき、家族は嬉しい…多分)。すなわちワーク・ライフ・バランスの改善につながるという構図だ。そのための主な手段は、無駄な業務を減らし、やらなければいけない業務ならICTなどでより効率的にできるよう工夫をすることだ。

2つめの狙いである「ダイバーシティ推進」には女性活躍、高齢者活用、障碍者活用、外国人就業など様々なサブテーマがあるが、元々は日本社会の少子高齢化がもたらした人手不足の解消が根っこにある。要は、働き盛りの日本人男性を中心とした従業員だけでは会社が回らなくなってきたので、従来ならマイナー扱いしていた人たちでも働く意欲があるなら仲間として取り込もうという流れだ(ちょっと露悪的な言い方ですかね)。

こういった「ダイバーシティ」対象層は従来の従業員層とは違って、「フルタイム・週5日では働けない」とか「残業はできない」、「体力や記憶力に不安がある」または「日本語理解力がやや不足する」などの課題を抱えていることが多い。そうした人たちでも働きやすい環境を作って受け入れたいというのが「ダイバーシティ推進」というテーマだ。そのための主な手段は、勤務時間などの社内制度を改善することや、マニュアルや施設・道具などを工夫することが中心となることが多い。

最後の狙いである「創造性開発(またはイノベーション推進)」はもっと上のレベルを目指すものだ。典型的には「効率向上」によって時間的余裕を取り戻した従業員に(「定まった仕事を単にこなす」のではなく)もっと頭を創造的な方向に使ってもらい、新しい製品・サービス・事業を開発することや、従来の業務のあり方を改善することを目指してもらおうというものだ。

そして実は「ダイバーシティ推進」もまた、そこに貢献することが期待される。新しく加わった従業員がもたらす多様性が組織に刺激を与え、新たな創造性を生むというものだ。典型的には、女性社員や外国人社員がそれまでの従業員では思いつかない視点で問題点を指摘し、新たなサービスのニーズを掘り起こすことにつながるといったパターンだ。

したがって「創造性開発」のための主な手段は、従業員に時間的余裕を取り戻させたり手法を学ばせたりするだけでなく、外部の人との交流や自己研鑽の意欲・機会を積極的にもたらすこと、社内でも色んな背景を持った人たち同士を交流させること等が重要になってくる。

そして「創造性開発」がうまく回ると、仕事が生む付加価値が一挙に拡大し(つまり生産性指標の分子部分が大きくなり)、その結果として会社の利益が上がった分だけ賃金引上げの糊代(のりしろ)が増える、という好循環に入ることができるのだ。

以上のように、同じ『働き方改革』といっても自社の課題や成熟度によって重点を置く狙いが異なること、そして狙いが異なれば執るべき手段も異なることは念頭に置いて進めるべきだろう。